今回は、既存の強制空冷システムに液体冷却ユニットを追加した「ハイブリッド冷却システム」を、さらに強化する手法を説明する。
サーバやデータセンターなどの放熱技術に注目が集まっている。演算処理を担うGPUとCPUの最大消費電力(熱設計電力(TDP))が増加しつつあることで、効率の高い放熱技術が強く求められるようになってきた。
そこで本コラムでは、サーバやデータセンターなどを支える最新の放熱技術を第468回から、シリーズで説明している。前回は、既存の強制空冷システムに液体冷却ユニットを追加した「ハイブリッド冷却システム」の概要を述べた。今回はハイブリッド冷却をさらに強化する手法をご説明する。
前回で述べたハイブリッド冷却システムでは、ラックマウントサーバの隣に「サイドカー熱交換器(Side Car HX)」と呼ぶ冷却水の循環器(CDU)を配置した。サイドカー熱交換器はサーバを冷却水で冷やす。一方、サーバによって温められた冷却水は、サーバルームの床下から上昇する冷たい空気を取り込んで温度を下げる。すなわち、サイドカー熱交換器(Side Car HX)そのものは空冷方式となっている。このことはサーバルームにおける空冷の効率を下げる。
そこで、サーバルーム内のCRAC(Computer Room Air Conditioner)とサーバルーム外部の液体熱交換器を循環している冷却水の活用を考えた。CDU(Coolant Distribution Unit)をCRACの近くに配置してCRACと同様に、外部からの冷却水で熱交換を実施する。
CDUからはサーバルームの床下を通じて冷却液(プロピレングリコール(PG)と純水の混合液体など)をラックマウントサーバに送出し、サーバを冷やす。サーバによって温められた冷却液はCDUに戻る。CDUでは外部からの冷却水によって冷却液の温度を下げる。
既存の強制空冷システムによっても、ラックマウントサーバは冷やされる。水冷と空冷の割合はおおよそ80%対20%で、水冷に負うところが大きい。冷却能力はラック当たりで最大100kWを超えるとみられる。ただし、コストは前回のサイドカー熱交換器(Side Car HX)に比べると上昇する。
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