ACPイニシアチブは現在、アーキテクチャの実現可能性から実際の実装へと移行しつつある。ドイツのハイルブロンにあるimecのAdvanced Chip Design Acceleratorは、実際の自動車シナリオでチップレットの実行可能性を実証するための機能リファレンスプラットフォームを作成している。Plackle氏は、「われわれは製品を開発しているのではなく、チップレットをベースとしたECUのリファレンスモデルを構築している。これらはAサンプルで、自動車メーカーがこの技術を評価し、信頼を獲得するためのプルーフポイントとなる」と述べている。
imecは設計の他にも、熱機械シミュレーション車両とセンサーを搭載したダミーチップを使用して、これらのパッケージをストレス下でテストし、故障の予測を行っている。Plackle氏は「われわれは故障の発生を望んでいる。あらゆる剥離やボールのせん断から、弱点がどこにあるのか、そして信頼性を高めるために設計をどのように改善すべきかが分かるからだ」と語った。
コンピューティングだけでは自動車はスマートにはならない。センサーも必要だ。imecの「SENSAI」プログラムでは、CMOSカメラや短波赤外線イメージング、完全固体シリコンフォトニクスLiDARなどの次世代モダリティを推進している。Plackle氏は「現在のセンサースタックは、まさに無法地帯だ。全ての自動車メーカーは、さまざまなセンサーの組み合わせを試しているが、何が最も効果的かを判断する基準がない」と述べている。
imecのアプローチは、シミュレーションフレームワーク(基本的にはセンサーアーキテクチャのデジタルツイン)を構築して、構成を仮想的にテストすることである。Plackle氏は「新しいセンサーが事故率やコーナーケースにどのように影響するかを、物理的に構築せずにシミュレーションできる。これにより、コストを削減し、開発を加速させることができる」と述べている。
imecはまた、精度の向上に向けて複数のコヒーレントモジュールで構成した広域仮想開口レーダーシステムや、現在のシステムの機械的弱点を解消するソリッドステート周波数変調連続波LiDARの開発など、重点的な研究開発プロジェクトも実施している。
Plackle氏は「一企業だけでチップレットとセンサーを自動車で機能させることは不可能だ」と言う。それには、協調的なエコシステムが必要である。自動車メーカーとティア1、半導体企業を結集したimecの「標準化と自動車再利用(STAR:Standardization and Automotive Reuse)」イニシアチブは、こうした背景から生まれた。「必要なのはサイロではなく標準規格だ。あるベンダーのチップレットが別のベンダーのチップレットと通信できなければ、モデル全体が崩壊してしまう」と同氏は述べている。
STARは、ワークショップやフォーラム、技術フォーカスグループを通じて、インタフェースやプロトコル、相互運用性レイヤーに関するコンセンサスを構築している。Plackle 氏は、「われわれは、規模の経済の基盤を構築している」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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