岡山大学とライス大学、サムスン電子および日本サムスンによる国際研究グループは、シリコンウエハー内部に浅く形成されたPN接合の深さを、非破壊・非接触で推定できる分析技術を開発した。
岡山大学とライス大学、サムスン電子および日本サムスンによる国際研究グループは2025年6月、シリコンウエハー内部に浅く形成されたPN接合の深さを、非破壊・非接触で推定できる分析技術を開発した。
先端半導体の開発に当たっては、ウエハースケールのレベルでデバイス内部の電気場分布やキャリア輸送特性、欠陥、高速応答などを簡単に非破壊・非接触で評価できる技術が求められている。
国際共同研究グループは今回、半導体にフェムト秒レーザーを照射することで発生するテラヘルツ波を検出・測定すれば、シリコンウエハー内部のPN接合を非破壊・非接触で評価・分析できることを明らかにした。
実際に、ウエハー内部のPN接合領域で励起された電子はn型シリコン層側へ、正孔はp型シリコン層側に流れる。この時に発生する瞬間的な電流によってテラヘルツ波が生成され、これが表面に伝わって空間に放射される。このテラヘルツ波を観測すれば、ウエハー内部におけるキャリアの動きが分かるという。
今回の研究では、半導体PN接合の光励起による電子の動きと、テラヘルツ波放射の関係を単純化したモデルで表すことによって、PN接合の深さを推定できる新たな分析技術を開発した。
実験では、異なるシリコンウエハーから発生するテラヘルツ波の、時間的な変化とPN接合深さによる違いを調べた。これにより、どのウエハーから発生するテラヘルツ波でも、約10ピコ秒の位置に振幅のピークが現れることが分かった。その振幅は、PN接合が深いほど小さくなることも確認した。テラヘルツ波ピーク振幅とPN接合深さの関係性から、約5nmという深さの違いでも明確に判別できることを実証した。
ライス大学の村上史和博士は、「典型的なフェムト秒レーザーの波長は800nm前後(赤色領域)だが、この波長だとシリコンウエハー表面の浅いPN接合を評価するのは容易ではない。今回はこの波長を半分(紫外領域の光)にしたことで、光が侵入する深さは浅くなった。波長を制御すれば、より浅い接合部の評価も正確に行える。深さ方向のプロファイルを評価できる可能性もある」とコメントした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.