東北大学の研究グループは産業技術総合研究所(産総研)と共同で、表面活性化接合とテンプレートストリッピングの技術を組み合わせて、中空ピラミッド構造のマイクロバンプを作製し、異種材料を低温で強固に接合できる半導体実装技術を開発した。
東北大学大学院工学研究科の日暮栄治教授らによる研究グループは2025年8月、産業技術総合研究所(産総研)ハイブリッド機能集積研究部門異種デバイスパッケージング研究グループの倉島優一研究グループ長らと共同で、表面活性化接合とテンプレートストリッピングの技術を組み合わせて、中空ピラミッド構造のマイクロバンプを作製し、異種材料を低温で強固に接合できる半導体実装技術を開発したと発表した。
マイクロバンプは、半導体チップと回路基板側の電極間を接続するために形成する微小な突起状の端子で、直径は数μmから数十μmと小さい。高集積化や高機能化が進む半導体チップを実装するための高度な技術として注目されている。
ただ、従来技術だと接合温度が約300℃に達するため、半導体チップへのダメージなどが懸念されていた。低温での接合技術も開発されているが、これまではバンプ先端部へ応力が集中することによって、半導体チップや基板が損傷することもあったという。
日暮氏らの研究グループはこれまで、表面活性化手法を用い大気中の常温環境で、金(Au)を接合させる技術の開発に取り組んできた。今回は、この「表面活性化接合」と、微細加工したテンプレート上に堆積させた金属膜を剥がす「テンプレートストリッピング」の技術を組み合わせた。これにより、中空構造のAuマイクロバンプを転写によって作成することに成功した。
研究グループは、有限要素により接合時の応力シミュレーションを行った。これにより内部が詰まった従来のバンプに比べ、中空バンプは接合時の応力集中が軽減されていることを確認した。
また、中空マイクロバンプを用いてシリコンチップを大気中の150℃という温度環境で接合した試料を作製し、せん断強度を測定した。この結果、接合部よりも先にシリコンチップ自体が破壊するなど、接合部は強固に接合できていることを実証した。これは接合時に生じる塑性変形によって新たな金属面が形成され、低荷重かつ低温でも密着性が高まるからだという。
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