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GaN、SiCパワー半導体の技術革新――PCIM 2025レポートEE Exclusive(6/10 ページ)

» 2025年09月30日 12時00分 公開
[永山準EE Times Japan]

車載SiCモジュール強化の三菱電機、独自モジュール「J3」の新製品投入へ

 三菱電機が、拡大が見込まれるxEV市場に向け車載SiCデバイスの技術開発を強化している。2024年に車載用パワー半導体モジュールの量産品として同社初のSiC MOSFET搭載品である「J3」シリーズを発表した同社は、PCIMにおいて、開発中の「J3シリーズ SiCリレーモジュール」を初公開した。

J3シリーズ SiCリレー J3シリーズ SiCリレー[クリックで拡大]

車載SiCパワーデバイスで攻勢

 三菱電機は、1997年に世界初となるハイブリッド車向けの供給をして以降、xEV向けパワー半導体モジュールの出荷実績を積み上げていて、これまでに3350万台以上の搭載実績を有するという。同社の車載用パワー半導体モジュールは、シリコンベースの「J」シリーズおよび「J1」シリーズがあるが、2024年1月、SiC MOSFETに最適な設計を採用し、サイズを60%削減するなどしたJ3シリーズを満を持して発表。車載SiCパワーデバイス市場でも攻勢に出た。

 直近では、BEV(バッテリー電気自動車)需要の鈍化や中国景気後退などを背景に、2025年5月にパワーデバイス事業の設備投資の一部延期を発表。8インチSiCウエハー生産に対応した熊本県菊池市の泗水地区の新工場棟についても、立ち上げは計画通りに進める一方で拡張投資は2031年度以降に延期するなどとしているが、同社は中長期的にはパワー半導体が力強く成長するという見方は維持。特にEVへの搭載を契機にSiCパワー半導体市場は2023年〜2028年まで年平均成長率(CAGR)30%で成長すると期待し、SiCパワーモジュールの展開を強化している。

8インチSiCウエハー 8インチSiCウエハー[クリックで拡大]

 「J3」シリーズは、低損失で高速駆動が可能なトレンチ型のSiC MOSFETを搭載。2in1仕様のパワー半導体モジュール「J3-T-PM」を基本構成要素とし、同社独自のピンフィン形状を持つアルミフィンにJ3-T-PMを3個搭載する「J3-HEXA-S」および、J3-T-PMを6個搭載する「J3-HEXA-L」といった形で、さまざまなxEV用インバーター設計にスケーラブルに対応可能となっている。また、J3シリーズはRC-IGBT搭載版も用意していて、搭載チップの種類やモジュール並列数などを変更することで、幅広い出力に対応が可能だ。

 同社の説明担当者は「自動車メーカーは、小型車やハイパワーの車両などさまざまな車種を扱う。また自動車業界の競争は熾烈で、設計開発におけるリソースや労力の最適化が望まれている。1つの基本設計があり、それをモジュール式に拡張できるJ3モジュールはそうした課題に対応するものだ。最適な設計をまず確立し、それを柔軟に調整できる」と強調していた。J3シリーズは既にサンプル提供中で、2026年にも量産開始する見込みだ。

フットプリント互換の1300V SiC MOSFETリレー

 PCIMの会場では今回、J3シリーズの基本構成要素であるパワー半導体モジュールとフットプリント互換の「J3シリーズ SiCリレーモジュール」を初公開していた。

 同製品はパワーモジュールのJ3シリーズと同様に、低損失のトレンチ型SiC MOSFETおよび同じパッケージ設計や補助機能を備えた「小型で耐久性が高く、寿命も長いなど、多くのな利点がある」(説明担当者)1300V SiC J3リレーモジュールだ。J3-T-PMと同じフットプリントであることから、メインのインバーターモジュールのすぐ隣に配置が可能になる。

J3シリーズ SiCリレーモジュールの概要 J3シリーズ SiCリレーモジュールの概要[クリックで拡大] 出所:Mitsubishi Electric Europe

 三菱電機はこのJ3シリーズ SiCリレーによって、車載バッテリー遮断ユニット向けで高効率なソリッドステートスイッチングソリューションを可能にし、システムの信頼性と性能を向上を実現するとしている。

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