TDKは2025年10月2日、アナログ電子回路を使用したリザバーAIチップのプロトタイプを北海道大学と共同で開発したことを発表した。CEATEC 2025で同チップと加速度センサーを組み合わせた「絶対に勝てないじゃんけんマシン」のデモ機を展示する。
TDKは2025年10月2日、アナログ電子回路を使用したリザバーAIチップのプロトタイプを北海道大学と共同で開発したことを発表した。同年10月14〜17日にかけて開催される「CEATEC 2025」(幕張メッセ)のTDKブースで、本チップとTDKの加速度センサーを組み合わせた「絶対に勝てないじゃんけんマシン」のデモ機を展示する。
リザバーコンピューティングは小脳の構造を模倣した、時系列変化情報処理に特化したデバイスだ。従来のディープラーニングモデルは入力層、中間層、出力層から構成されていて、中間層が多いほど複雑な演算が可能な一方、消費電力の増大やレイテンシの発生につながる。
対するリザバーコンピューティングは入力層、リザバー層、出力層の3層構成で、時間的に伝搬する物理現象をリザバー層に送り、変化などを出力層で読み取って演算する。ディープラーニングモデルのように万能ではないが、シンプルな構造から低消費電力かつ高速処理が可能で、小さくリアルタイム学習も可能なことから「エッジAIに適している」(TDK担当者)という。
今回TDKは、同社の有するアナログ技術を用いて、アナログ電子回路のみで構成されたリザバーAIチップのプロトタイプを開発。「世界最高クラスの性能を実現しているが、アナログ/デジタル変換を行わないため、従来品よりも消費電力が低い。それを既存の成熟した技術だけで作り上げたこともポイントだ」(TDK担当者)と語る。
CEATEC 2025で展示される絶対に勝てないじゃんけんマシンは、親指に装着した加速度センサーの情報をリザバーAIチップが高速処理して、プレイヤーよりも先に勝利手を出すというもの。特殊な形のチョキなども、10回ほど学習プロセスを重ねれば、リアルタイムで対応する。
TDKの担当者は「リザバーコンピューティングはさまざまな場面で活用できるため、逆にピンポイントでの製品開発が難しい。まずはCEATEC 2025でのデモなどを通じて知ってもらい、顧客のユースケースにあわせてカスタマイズするかたちで開発を進めたい」とする。
「ディープラーニングモデルのクラウドAIと、リザバーコンピューティングのエッジAIを使い分けることで、AI社会の電力や通信負荷問題の解決に貢献できる。センサー事業のTDK SensEIとのシナジーでさらなる付加価値を追求しつつ、大脳を模倣したニューロモルフィックデバイスとあわせて、AIエコシステム市場に貢献したい」(TDK担当者)
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