4つの項目を順番に説明していく。1番目は「1)HBM(市場)の成長はAI(人工知能)が牽引する」である。結論一覧のスライドによると、DRAM市場のHBM比率(金額ベース)は2023年の8%から2025年は33%に拡大する。
Wu氏はHBM比率の推移を、別のスライドでも説明した。DRAM市場を金額(販売額)と記憶容量(ビット換算出荷量)に分けている。2024年のDRAM市場に占めるHBM製品の比率は、販売額が19%、ビット換算出荷量は5%と推定した。このことから、DRAM製品全体の平均単価(ビット単価)よりも、HBM製品のビット単価はかなり高いことが分かる。
2025年にHBM比率は、販売額で33%、ビット換算出荷量で8%に増加すると予測した。続く2026年にHBM比率はさらに拡大し、販売額で41%、ビット換算出荷量で9%と予測する。
HBM製品の用途は、ほぼ全てがAI(人工知能)向けだ。具体的にはAIチップモジュールの主記憶としてHBM製品が使われる。AIチップを独自開発しているNVIDIA、AWS(Amazon)、Google、AMDの4社で、HBM需要の95%を占める。
2025年の主要世代はHBM3E(HBM3e)である。HBM3あるいはHBM2E(HBM2e)を搭載するAIチップ企業もある。2026年も主要世代はHBM3E(HBM3e)で変わらない。ただしDRAMダイ(コアダイ)の積層枚数は8枚から12枚へと増やす。またHBM3とHBM2E(HBM2e)が消える。換わってHBM4世代を採用したAIチップが登場する。HBM4世代のけん引役はNVIDIAである。
2番目の項目は「2)サプライヤによる競合が激しくなる」だ。DRAM大手3社のSK hynixとSamsung Electronics、Micron Technologyは、いずれも2025年の時点でHBM製品に力を入れており、競争が激しくなろうとしている。SK hynixは2026年にHBM向けウエハーの処理量が同社の製品別ウエハー処理量で最大比率を占めると見込む。
3番目の項目は「3)先端技術への移行が進む」である。DRAMサプライヤ各社は、製造プロセスをさらに微細化するとともに、従来の製造プロセスによる製品出荷を段階的に休止する。DDR5世代の16Gbit DRAMでは大手3社が、2025年〜2026年にかけて「1b/1beta世代」と「1c/1gamma世代」の量産を立ち上げつつある。
DDR5世代品のデータ転送速度は、6400MT/秒の品種が2025年中に主要製品となる。より高速な7200MT/秒〜8800MT/秒の品種は、2026年下半期以降の量産開始を予定する。
4番目の項目は「4)DRAM価格の不透明化」だ。2025年にDRAM価格はHBM系とDDR系ともに上昇あるいは同一に推移した。しかし2026年上半期は、生産能力の割り当てをDDR系に戻す動きによって価格維持力が弱くなる。またHBM系でも、HBM3E世代品は量産技術の習熟によって製造コストが低下し、2026年始めに価格が下がる懸念がある。
(次回に続く)
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