矢野経済研究所の調べによれば、ワイドバンドギャップ半導体単結晶の世界市場(メーカー出荷金額ベース)は、2025年に2869億円となる見込みで、2035年は8298億円規模に達するという。バッテリー電気自動車(BEV)や鉄道車両、産業機器などに搭載されるパワー半導体向けを中心に、ワイドバンドギャップ半導体単結晶の採用が進む。
矢野経済研究所は2025年10月、ワイドバンドギャップ(WBG)半導体単結晶の世界市場(メーカー出荷金額ベース)調査結果を発表した。バッテリー電気自動車(BEV)や鉄道車両、産業機器などに搭載されるパワー半導体向けを中心にWBG半導体単結晶の採用が進んでいて、2025年は2869億円となる見込みで、2035年には8298億円規模に達すると予測した。
今回の市場調査は、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)、Ga2O3(酸化ガリウム)および、ダイヤモンドを対象とした。ただし、SiCにはLED用単結晶が含まれておらず、ダイヤモンドは単結晶だけでなく半導体用途の多結晶も含めた。調査期間は2025年6〜9月。
SiC市場は、車載用途を中心に市場が拡大する。主なウエハーサプライヤーは2030年に向けて増産計画を進めているが、BEVなど環境対応車の市場成長率は鈍化しているという。GaN市場は、照明用途のLEDなどに加え、高周波デバイスやパワーデバイスへの用途拡大に向け、ウエハーの大口径化を進めている。まもなく、4インチウエハーの量産も始まる予定だという。
今後期待されるのが、Ga2O3である。ウエハーサプライヤーも増えていて、2026年には6インチウエハーの量産が始まるとみている。日本国内ではコンソーシアムも形成される模様で、デバイスの普及拡大に向けてGa2O3の標準化などに取り組む。
究極の半導体材料といわれるダイヤモンド市場は、大学発ベンチャーを含め、ウエハーサプライヤーやデバイスメーカーの数が増えてきた。しかも、日本がけん引している材料でもあり、急成長が期待される市場でもある。
今回の調査対象外となった材料の中では、AlN(窒化アルミニウム)やGeO2(酸化ゲルマニウム)などの採用に期待している。
なお調査レポートでは、SiCウエハーの製造方法についても触れている。現在は「昇華法」と「溶液法」が主流となっていて、これまで多くの企業が昇華法を採用してきた。近年は、溶解法を用いてウエハーを製造する企業が増えてきたという。結晶中に温度勾配を形成しないため熱ひずみが小さく、原理的に大口径化が容易か欠陥も少なく低コスト化にも有利、といったメリットがある。半面、結晶成長時に制御すべきパラメーターが多く、これまでは適切な成長条件を見出すことが難しかったという。
こうした中で、複数のウエハーメーカーが従来の課題を解決し、溶液法を用いて製造する準備を進めている。国内メーカーで注力しているのがセントラル硝子とオキサイドパワークリスタルだ。昇華法で製造したSiCウエハーは、n型と半絶縁型の半導体にしか対応できなかった。これに対し溶液法で製造すればp型半導体に対応できる。このため、SiCパワー半導体の進化に大きく寄与するとみられている。
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