佐賀大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)および、ダイヤモンドセミコンダクターは、ダイヤモンドを用いてマイクロ波帯域(3〜30GHz)やミリ波帯域(30〜300GHz)で増幅動作が可能な「高周波半導体デバイス」を開発した。オフ時の耐電圧は4266Vで、電力利得の遮断周波数は120GHzだ。これらの値はいずれも世界最高レベルだという。
佐賀大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)および、ダイヤモンドセミコンダクターは2025年12月、ダイヤモンドを用いてマイクロ波帯域(3〜30GHz)やミリ波帯域(30〜300GHz)で増幅動作が可能な「高周波半導体デバイス」を開発したと発表した。オフ時の耐電圧は4266Vで、電力利得の遮断周波数は120GHzだ。これらの値はいずれも世界最高レベルだという。
今回の研究は、文部科学省が取り組む「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」の委託事業および、情報通信研究機構(NICT)の「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の要素技術・シーズ創出型プログラム」に基づいたものだ。
特にスターダストプログラムは、宇宙向け人工衛星に搭載する送信用マイクロ波電力増幅デバイスの実用化を目指している。こうした中で、放熱性や耐電圧性、放射線耐圧に優れ、宇宙空間でも安定した動作が期待できるダイヤモンド半導体デバイスが注目されている。
佐賀大学は、ダイヤモンド基板結晶ウエハーの大口径化やダイヤモンド半導体デバイスの開発に取り組んできた。これまで試作したダイヤモンド半導体デバイスでは、875MW/cm2の出力電力、3659Vの出力電圧を達成している。また、作製したパワー半導体回路では、高速スイッチング動作や約半年間の連続安定動作などを実証してきた。
今回は、マイクロ波帯域やミリ波帯域でも利用可能な特性を備えたダイヤモンド半導体デバイスの開発に取り組んだ。具体的には、ダイヤモンド半導体デバイスのゲート絶縁膜に用いられるトリメチルアルミニウムの純度を高めた。この結果、ゲート絶縁膜の耐電圧を向上でき、オフ時の耐電圧が4266Vへと向上した。
また、電子線描画技術を用いて、157nmという微細なT型ゲート電極を再現性良く作製することに成功した。ゲート電極の寸法を微細化すれば動作周波数は上がるものの、抵抗が増える。この課題を解決するため、今回はゲート電極の下部を微細化し、上部の寸法は大きめにするT型構造とした。
開発したダイヤモンド半導体の電力利得を測定したところ、遮断周波数(最大発振周波数)は120GHzだった。さらに、ダイヤモンド半導体デバイスの実用化に向けて、独自のワイヤーボンディング技術やパッケージング技術も新たに開発した。
ダイヤモンドセミコンダクターは、開発したダイヤモンド半導体デバイスについて、2026年1月からサンプル品の製造と販売を始める。
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