中国製パワーデバイスの台頭については2025年11月の本連載記事で詳しく述べたので、ここでは詳細を割愛する。パワーデバイスはクルマの電動化だけでなく、データセンター向けにも需要が増える、という声も聞かれるが、現時点でデータセンター向けの需要はパワーデバイス全体の5%にも満たない。これに対して車載向けは全体の50%近くを占めており、市場規模としては約10倍の開きがある。
いずれにしてもコスト対応力のある中国製パワーデバイスが世界市場に出回るのは時間の問題である。2026年にもその兆候が表れるかどうか、確認する必要があるだろう。
Nexperiaはもともと、オランダNXP Semiconductorsの一部門だったが、2019年に中国の電子機器大手、Wingtech(聞泰科技)が買収した。2024年12月、米国政府はWingtechをエンティティーリストに追加し、2025年9月には100%子会社であるNexperiaも規制対象とされたことで、問題が表面化した。中国政府は、中国国内で製造されたNexperia製品を輸出しない、という報復措置に出たのである。
Nexperiaは小信号トランジスタ市場で約20%シェアを持ち、売上高の過半が車載であるために、自動車業界に大きな影響が出た。米中間の話し合いで現在は問題が収束しているが、実際には「解決を1年先送り」しただけで、2026年も同様の問題が再燃する可能性が高い。
TSMCの熊本第1工場は22nmまでのレガシープロセスが中心で、立ち上がりは順調だったが「稼働率が50%程度に低迷している」という情報が飛び交っている。TSMC自身は絶好調だが、同社にしても需要は最先端プロセスに集中しており、レガシー分野はあまり需要が活性化していないのである。
そして熊本第2工場の建設が現在進んでいるが、当初計画していた6〜40nmではなく、4nmプロセスを導入する計画に変更されようとしている。現在4nmの需要は日系顧客からは見込めないが、NVIDIAなど北米には最先端プロセスを必要としている顧客が多数存在する。米国よりも建設コストや工場運営コストの安い日本で最先端プロセスを量産することに、TSMCは乗り気のようだ。しかも4nmだけでなく、2nmラインの導入の計画まで浮上している、との情報もある。
以上、独断と偏見でことし2026年に注目すべき10項目を選んでみた。これらが本当に注目されるかどうか、1年後に振り返って反省してみたい。
本稿で触れたように、半導体産業は技術だけでなく、政策や地政学を含めて捉える必要がある局面に入っています。こうした観点をもう少し立体的に考える場として、少しだけ告知をさせてください。
2026年1月22日、茨城県主催の次世代イノベーションをテーマにしたウェビナーに登壇します。日本の半導体産業の現状やRapidus、先端ロジックを巡る課題などについて、記事では書き切れなかった背景も含めて紹介する予定です。
2026年1月22日開催 茨城県主催ウェビナー(参加無料)
「半導体の未来を創る拠点―茨城から始まる次世代イノベーション―」
また、半導体業界の動向や企業戦略の分析については、半導体情報誌「大山レポート」でも継続的に取り上げています。直近では 「大山レポート No.6」 を発刊し、
「崖っ縁のIntel ― 破綻回避のシナリオとその“とばっちり”」
と題して、米国半導体政策や政権動向も視野に入れた分析を行いました。本号については、内容の性質上、英訳はしないつもりです。
本連載では今後も、「AI一色」に見えがちな半導体市場を多面的に見ていきたいと考えています。また1年後、振り返りながら検証できればと思います。
慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。
1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。
2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。
2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。
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