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AIは「バブル」ではない――桁違いの計算量が半導体に地殻変動を起こす湯之上隆のナノフォーカス(87)(4/5 ページ)

» 2026年01月26日 11時00分 公開

TSMCの稼ぎ頭はN5からN3へ

 この巨大な「AIトレンド」の波に乗って、最も効率よく稼ぐことができる半導体メーカーは、TSMCであろう。図10は、TSMCのノード別売上高の推移を示しており、稼ぎ頭がN7からN5へ、そしてN3へシフトしている流れを可視化している。

図10 TSMCの四半期のノード別売上高 図10 TSMCの四半期のノード別売上高[クリックで拡大] 出所:TSMCのHistorical Operating Dataをもとに筆者作成

 そして、図11が示すのは、ノード別のウエハー投入枚数の推移である。ここでは、今後増えるのはN5、N3、N2だけであり、それ以外は減少する傾向が見て取れる。これは「先端が重要だ」という綺麗事ではない。先端しか増えないという現実だ。つまり、TSMCは、先端だけで稼ぐファウンドリーに変ぼうしたということである。

図11 TSMCの四半期のノード別ウエハー投入枚数(2025年Q4は予測) 図11 TSMCの四半期のノード別ウエハー投入枚数(2025年Q4は予測)[クリックで拡大] 出所:Claus Aasholm, “One Peak short of Twin Peaks”, Semiconductor Business Intelligence, Oct 22, 2025のデータおよび筆者の推測

 生成AIの計算回数はべらぼうに多い。だから高性能なAI半導体が多数必要となる。そして、それには先端プロセスの巨大なCapacityが必要不可欠になる。その要求に応えられるのは、もはやTSMCしか存在しない。この単純な因果関係が、半導体産業の重力になっている。

N3の主役はAppleからNVIDIA&Broadcomへ

 ここからが興味深いところだ。これまで、TSMCの先端プロセスをけん引してきた最大顧客といえば、それはAppleだった。しかし、その時代が揺らいでいる。

 図12および図13は、TSMCのN3の企業別ウエハー投入枚数の予測である。ここでは、2025年から2026年にかけて、NVIDIAやBroadcomの投入枚数が増え、Appleを上回る傾向が見て取れる。

図12 TSMCの3nmの企業別ウエハー投入枚数の予測(月産1000枚) 図12 TSMCの3nmの企業別ウエハー投入枚数の予測(月産1000枚)[クリックで拡大] 出所:Joanne Chiao( TrendForce )、「2026年ファウンドリー市場の展望ー先端プロセスの優位性と成熟プロセスの飽和」(2025年12月16日)のセミナーのスライドのデータを基に筆者作成
図13 TSMCの3nmの企業別ウエハー投入枚数の予測 図13 TSMCの3nmの企業別ウエハー投入枚数の予測[クリックで拡大] 出所:Joanne Chiao( TrendForce )、「2026年ファウンドリー市場の展望ー先端プロセスの優位性と成熟プロセスの飽和」(2025年12月16日)のセミナーのスライドのデータを基に筆者作成

 これは単なる顧客ランキングの話ではない。先端半導体の歴史で言えば、「スマホ用プロセッサが先端を引っ張る時代」から、「AI半導体が先端を食い尽くす時代」へ移ったことを意味する。

 Appleは消費者体験を良くするために先端を使う。NVIDIA&Broadcomはクラウドの覇権を握るために先端を使う。この違いは歴然としている。AI半導体は“売れれば終わり”ではない。“稼働し続けるインフラ”として増殖する。つまり、先端プロセス需要の粘着性が高い。

 TSMCの稼ぎ頭がN3になるという話は、TSMCが強いというだけの話ではない。AIが先端の需要構造を作り替えた、ということだ。

 そして、TSMCが2025年第4四半期から量産を開始したN2においても、同様の現象が起きるだろう。N2を最初に使うのはAppleかもしれない。しかし、半年もすれば、NVIDIA&Broadcomが主役に躍り出るだろう。要するに、Appleは最先端ライン構築の露払いとなり、その後は横綱としてNVIDIA&Broadcomがマジョリティーを占め、TSMCの利益に大きく貢献することになるということだ。

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