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AIは「バブル」ではない――桁違いの計算量が半導体に地殻変動を起こす湯之上隆のナノフォーカス(87)(2/5 ページ)

» 2026年01月26日 11時00分 公開

AIは過去のバブルと決定的に違う

 では、ここで本題だ。この状況はバブルなのか?

 結論から言えば、今回の現象を「バブル」で片付けるのは完全に間違っている。なぜなら、過去のバブルと今回では“需要の性質”が根本的に違うからだ。このことを定量的に示してみよう。

 図4は世界半導体出荷額と前年成長率の推移を示しており、Windows95バブル、ITバブル、メモリバブルの局面が描かれている。この図から分かるように、過去のバブルでは、急増の後に急落する。これは需要が「一時的な増大」と「在庫調整」に強く依存していたからだ。

図4 世界半導体出荷額と前年成長率 図4 世界半導体出荷額と前年成長率[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 ここで、図5Aは、Windows95バブル、ITバブル、メモリバブル、そして今起きているAIブーム(とりあえずブームと言っておく)において、N年〜N+3年の前年成長率を並べた比較表である。そして、これらを図5Bにグラフ化してみると、Windows95バブルは41.7%の後に−8.6%、ITバブルは36.8%の後に−32.0%、メモリバブルは13.4%の後に−12.0%に落ち込んでいる。つまり“盛り上がって、崩れる”というサイクルがはっきりしている。

[クリックで拡大] 出所:WSTSのデータを基に筆者作成

 一方、生成AIブームでは、2023年−8.1%→2024年19.7%→2025年22.5%となっており、ことし2026年も間違ってもマイナスにはならない。そして、多くの識者が論じている通り、2030年までにマイナス成長になることはないだろう。

 要するに、今起きている現象は「バブル」ではなく、一つの、しかも、大きくて強力な「トレンド」であると言えよう。

 今回が過去と違うのは、需要の源泉が「PC普及」や「スマホなどの通信機器更新」といった“買い替えの波”ではなく、計算需要のインフラ化にあるという点だ。生成AIは、ある製品が売れて終わる話ではない。

 AIは社会のあらゆる業務に入り込み、サービスに組み込まれ、検索にも統合され、企業活動の生産性の土台になる。その土台が極めて重い計算でできている以上、クラウド投資は“景気の熱”ではなく“社会の構造”として定着する。

 この意味で、生成AIを「バブルだ」と言う人は、過去の記憶に逃避している。今回の現象は、過去の教科書のページにはないものである。

2030年に向けて投資は伸び続ける

 では、クラウドメーカーTop8社の設備投資はどこまで膨張するのだろうか? 図6は、クラウドメーカーTop8社によるデータセンター投資予測で、弱気・ベース・強気の3シナリオが示されている。

図6 クラウドメーカーTop8社によるデータセンタへの投資予測 図6 クラウドメーカーTop8社によるデータセンタへの投資予測[クリックで拡大] 出所:TrendForceのプレスリリースと筆者の予測l

 ここで注目すべきは、弱気のシナリオですら投資が積み上がる傾向になっている点だ。それは、生成AIが“贅沢品”ではなく“競争条件”だからである。

 そして、生成AI時代のクラウド競争は、ここが残酷だ。投資を止めた企業は「利益率が改善する」どころか、「AI性能で負け、顧客を失い、プラットフォーム価値を失う」。つまり、投資の減速は合理的な経営判断ではなく、敗北宣言に近い。

 実際、投資の回収は一筋縄ではいかない。GPUは高い。HBMも高い。電力も足りない。冷却は難しい。サプライチェーンは複雑だ。にもかかわらず投資が止まらないのは、投資利益率(ROI)を論じる前に「計算能力を持たない者は市場から消える」という構造が成立してしまったからだ。

 結局、クラウド投資とは「未来を買う」行為ではない。「現在を守る」行為になった。この構造がある限り、2030年に向けて投資が増えるのは当然のことのように思われる。

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