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AIは「バブル」ではない――桁違いの計算量が半導体に地殻変動を起こす湯之上隆のナノフォーカス(87)(3/5 ページ)

» 2026年01月26日 11時00分 公開

データセンター向けLogic市場が急拡大

 クラウド投資の増大は、半導体市場拡大に直結する。特にデータセンター向けLogicは、今後最も確実に市場が膨らむ領域だ。

 図7はデータセンター向けLogicのフォアキャスト(2024→2030年)である。GPU市場は1000億米ドルから2倍以上の2300億米ドルに増大するとともに、AI ASICが90億米ドルから840億米ドルへ9倍以上の伸びが予測されている。

図7 データセンター向けLogicのフォアキャスト(2024→2030年) 図7 データセンター向けLogicのフォアキャスト(2024→2030年)[クリックで拡大] 出所:Yole Groppの予測データを主に筆者作成

 ここで見落としてはいけないのは、生成AIはNVIDIAのGPU一択では終わらないという点だ。ハイパースケーラーは、単一ベンダー依存を嫌う。価格交渉力を失うからである。そして“性能を落とさず、むしろ向上させて、コストを下げる”ために特定用途向けAI ASICへ傾く。この多くをBroadcomが設計している。

 つまり、AI半導体市場は「GPUだけの黄金時代」ではなく、「GPUが柱でありつつ、AI ASIC(Broadcom)が巨大化して二本足になる」市場へ移行する。GPUが主役であり続けるとしても、AI ASICは確実に伸びる。これがデータセンターLogic市場の現実である。

メモリは「足りないまま高騰」する

 そして、生成AIが最も激しく食い尽くすのがメモリだ。図8はメモリ市場の予測(2024→2030年)を示しており、DRAM市場は970億ドルから1940億ドルへ倍増し、そのうちHBMが980億ドルに達する見込みである。

図8 メモリ市場の予測(2024→2030年) 図8 メモリ市場の予測(2024→2030年)[クリックで拡大] 出所:Yole Groppの予測データを主に筆者作成

 つまり、2030年には、DRAM市場の半分がHBMになる。これは単なる市場拡大ではない。メモリ産業の主役交代を意味している。

 さらに図9ではDRAMとNANDのSpot価格が2023年から2026年にかけて高騰している。ここで「価格が上がれば増産して落ち着く」という“昔の常識”は通用しない。HBMの増産は難しい。歩留まり向上が困難である。パッケージも関係する。装置も材料も制約が多い。供給が需要に追い付くのは簡単ではない。

図9 DRAMとNANDのSpot価格の高騰 図9 DRAMとNANDのSpot価格の高騰[クリックで拡大] 出所:TrendForceのデータを基に筆者作成

 加えて、メモリメーカーはAIサーバ向けへ軸足を移す。その方が、利益率が高いからだ。するとPCやスマホ向けの汎用メモリは供給が細り、価格は上がる。つまりAIの拡大は、メモリ市場に「慢性的な逼迫」と「高止まり」を内蔵させる。

 要するに、メモリ不足は解消せず、価格は高騰し続けることになる。これは“例外的な一時的現象”ではなく、AI時代の新しい平常運転になり得る。

 筆者は、昨年12月に、6年ぶりにPCを買い替えた(かなり慌てて)。DRAMやSSDの高騰が始まっており、しかも、その高騰は今後も慢性的に続く。従って、PCメーカーにメモリの在庫があるうちに買っておくべきだと判断したからだ。メモリ価格の高騰に伴って、PCやスマホ価格も上昇するだろう。もし、買うのが半年遅れたら、PC価格が倍増している可能性がある。筆者は「間一髪セーフ」だったかもしれない。

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