2025年12月に開催された国際学会IEDMにおける、TSMCの講演を解説するシリーズ。今回は、アウトラインの第2項である「先進パッケージ技術の進化」を取り上げる。
2025年12月に開催された国際学会IEDMのショートコース(技術解説)で、シリコンファウンドリー最大手のTSMCが最新のパッケージング技術を説明した。講演のタイトルは「Advanced Packaging and Chiplet Technologies for AI and HPC Applications(AIおよびHPCに向けた先端パッケージング技術と先端チップレット技術)」、講演者はAdvanced Package Integration Division R&DのディレクターをつとめるJames Chen氏である。大変に参考となる内容だったので、その一部をご紹介したい。ただし講演内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演内容を筆者が適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。
講演「Advanced Packaging and Chiplet Technologies for AI and HPC Applications(AIおよびHPCに向けた先端パッケージング技術と先端チップレット技術)」のアウトライン[クリックで拡大] 出所:TSMC(IEDM 2025のショートコース(番号SC1-5)で公表された講演スライドから)タイトルスライドの次に示されたアウトラインは、「AI and HPC Market Outlook(AIとHPCの市場を展望)」「Advanced Package Technology Evolutions(先進パッケージ技術の進化)」「System-Technology Co-Optimization (STCO)(システムと製造の協調最適化)」「Emerging Advanced package technology(次世代の先進パッケージ技術)」「Summary(まとめ)」となっていた。
本シリーズの初回である前回は、アウトラインの第1項「AI and HPC Market Outlook(AIとHPCの市場を展望)」に相当する部分をご報告した。今回からはアウトラインの第2項「Advanced Package Technology Evolutions(先進パッケージ技術の進化)」の概要をご紹介する。
おおよそ西暦2010年までの大規模半導体集積回路(LSI)は、1枚のシリコンダイに搭載するトランジスタの数を増やすことで、より多くの機能を取り込むとともに、動作周波数を高めることで進化してきた。システムを1枚のチップ(シリコンダイ)に収容する「システムLSI」あるいは「SoC(System on a Chip)」が標準的な考え方(「モノリシック集積」の規模拡大)だった。半導体パッケージはシリコンダイの性能を維持しながら、シリコンダイと実装基板(多くの場合はプリント基板)を電気的かつ機械的に接続する役目を負っていた。これが既存の半導体パッケージング技術(「従来パッケージング技術」)である。
ところが、「モノリシック集積」の規模拡大に伴うシリコンダイの寸法拡大(面積増大)が、いくつかの要因によって制限されるようになってきた。最も重要な問題は製造コストの急激な増加である。製造コストは粗くまとめてしまうと、1枚のウエハーから何枚のシリコンダイを生産できるかによって決まる。生産枚数が多くなると、シリコンダイ当たりの製造コストは低下する。
生産可能なシリコンダイの枚数は、シリコンダイの寸法(シリコン面積)によって決まる。シリコン面積の拡大はウエハー当たりの生産可能枚数の減少、すなわち製造コストの上昇を意味する。過去にはウエハーの口径を拡大することによって生産枚数の減少と製造コストの上昇を抑えてきた。しかしウエハーの口径(直径)は300mmが実用的な最大値となっており、次世代ウエハー(直径450mm)に移行する見込みはほぼゼロに近い。
そこで製造コストを抑えるため、意図的にシリコンダイを2つ以上に分割し、2つ以上の小さなダイ(ミニダイあるいはチップレット)をパッケージ基板にならべるという考え方(チップレット)が登場した。以前から存在していた「マルチチップパッケージ」(複数の半導体ダイを1つのパッケージに収容するもの)と「チップレット」は違う。前者は、異なるプロセス技術で製造したシリコンダイを1つのパッケージにまとめることで取り扱いを容易にするとともにプリント基板への実装面積を節約する。後者は、本来であれば(製造コストを無視すれば)容易に製造可能なシリコンダイを、わざと複数の小さなダイ(チップレット)に分割して製造コストを大きく下げる。チップレットを1つのパッケージにまとめるコストを差し引いても、全体の製造コストはシステムLSI(SoC)よりも低くなる。
チップレットを積極的に活用すると、トランジスタ数でシステムLSI(SoC)を超えることが可能になる。またロジックだけでなく、メモリやミックスドシグナル、入出力回路などのチップレットを同じパッケージに収容することで、複数の異種ダイを集積化(ヘテロジニアス集積化)する。こうなると総合性能ではモノリシック集積のSoCをはるかに超える、ヘテロジニアス集積化モジュールが実現できる。
ヘテロジニアス集積化(先進パッケージング)技術によってモノリシック集積(SoC:システムオンチップ)の限界を超える。横軸を時間、縦軸を性能とするイメージ[クリックで拡大] 出所:TSMC(IEDM 2025のショートコース(番号SC1-5)で公表された講演スライドから)そしてヘテロジニアス集積化モジュールの高性能化と大規模化に不可欠な要素技術が、先進パッケージング技術だと言えよう。
(次回に続く)
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