北海道大学の猪熊泰英教授らによる研究グループは、極めて酸性度が高い「超酸」中でも、分解せずに発光し続ける蛍光色素「超酸耐性BODIPY(ボロン−ジピロメテン)」を開発した。極限酸性環境で用いられるセンサーなどへの応用に期待する。
北海道大学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)/同大学大学院工学研究院の猪熊泰英教授らによる研究グループは2026年3月、極めて酸性度が高い「超酸」中でも、分解せずに発光し続ける蛍光色素「超酸耐性BODIPY(ボロン−ジピロメテン)」を開発したと発表した。極限酸性環境で用いられるセンサーなどへの応用に期待する。
BODIPYは、可視領域で強い蛍光発光を示す色素。1960年代に開発され、生体分子の標識や細胞の染色、分子やイオンのセンシングなどに利用されている。化学修飾により発光色を自在に変化させることができ、吸収した光と放出される光のエネルギー差が小さいなど、さまざまな特長がある。ただ、酸性環境下ではホウ素原子が脱離して蛍光発光が失われるという弱点もあった。
猪熊教授はこれまで、BODIPY色素の部分構造である化合物の「ピロール」を3つ組み合わせて環状分子を作製すると、その内部に導入されたホウ素原子は、強い酸性環境でも脱ホウ素化しないことを見出していた。
そこで今回、環状分子の中にBODIPYと同じ骨格を組み込むことができれば、超酸耐性BODIPYを実現できると考えた。具体的には、ホウ素原子を鋳型として鎖状のピロール3量体を縮合環化することで、超酸耐性BODIPYを合成した。
合成した超酸耐性BODIPYを、メタンスルホン酸などの強酸中に溶解させると、脱ホウ素化ではなく、ピロール部位がプロトン化されることが分かった。プロトン化により蛍光発光の阻害要因となるピロールからの光誘起電子移動が抑えられ、BODIPY由来の蛍光発光を観測できた。フルオロスルホン酸中でも、脱ホウ素化を起こさず最大90%の蛍光量子収率となった。1日以上にわたって安定した蛍光発光を維持できることを確認した。
酸耐性に加え、熱や光に対する安定性も既存のBODIPYを上回ることが分かった。さらに、化学修飾により発光波長や溶解度を制御できることを確認。フッ素化溶媒中でパーフルオロオクタン酸(PFOA)を検出できるセンサーも開発した。さらに、Nafionビーズやスルホン化ゲル、イオン交換樹脂といった強酸性材料の蛍光染色にも成功したという。
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