北海道大学と京都大学の研究グループは、銅酸化物高温超伝導体の母物質である反強磁性絶縁体「La2CuO4」に対し微量の酸素をしたところ、単層型CuO2伝導層で超伝導状態を発現させることに成功した。これにより、「反強磁性」と「超伝導」の状態を同時に実現する「二面性」を併せ持つことが分かった。
北海道大学大学院理学研究院の井原慶彦講師と小田研招へい教員、京都大学大学院理学研究科の石田憲二教授らによる研究グループは2025年8月、銅酸化物高温超伝導体の母物質である反強磁性絶縁体「La2CuO4」に対し微量の酸素をドープしたところ、単層型CuO2伝導層で超伝導状態を発現させることに成功したと発表した。これにより、「反強磁性」と「超伝導」の状態を同時に実現する「二面性」を併せ持つことが分かった。La2CuO4は、銅酸化物高温超伝導体の母物質として最も古くから知られているという。
これまでの銅酸化物高温超伝導体は、ランタン(La)をストロンチウム(Sr)やバリウム(Ba)に元素置換することで反強磁性秩序を抑制し、超伝導を発現させていた。今回は、微量の酸素をドープしたことで反強磁性秩序がほとんど抑制されず、低温で超伝導状態と共存できることが分かった。
実験では、酸素をわずかにドープした「La2CuO4+δ単結晶」を作製し、核四重極共鳴(NQR)測定を行った。これにより、反強磁性秩序状態(ネール状態)中では酸素ドープが均一に行われ、単結晶試料全体で一様に内部磁場が発生していることを確認した。
さらに、核スピン−格子緩和率1/T1を測定したところ、超伝導転移温度が32Kで1/T1に異常がみられることを確認した。これにより、La2CuO4+δではネール秩序を示す伝導キャリアが、低温では同時に超伝導秩序を示すという、二面性を併せ持つことが判明した。
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