NXPセミコンダクターズは、通信や産業、医療分野に向けた「ハイスピードコンバータ」の製品群を強化する。
NXPセミコンダクターズは、通信や産業、医療分野に向けた「ハイスピードコンバータ」の製品群を強化する。新たに3つの製品群を立ち上げ、2010年末までにサンプル出荷を開始する予定である。2010年9月に東京都内で開催した報道機関向け事業説明会で、同社のハイスピードコンバータ製品担当のシニアディレクター兼製品マネージャを務めるMaury Wood氏が明らかにした(図1)。
これまで同社は、サンプル数が65Mサンプル/秒(分解能は10ビット)を越えるA-D変換器ICや、サンプル数が125Mサンプル/秒(分解能10ビット)を越えるD-A変換器ICを、「ハイスピードコンバータ」と呼び、数多くの品種を製品化してきた。
分解能が最大16ビットでサンプル数が最大1.25Gサンプル/秒のD-A変換器ICを含む新たな製品群を市場投入することなどで、ハイスピードコンバータ分野での全世界での市場シェアを2012年に10%まで高めることを目標に据えた。NXPセミコンダクターズのハイスピードコンバータ分野における市場シェアは、2010年時点で5%程度だという。
市場シェアを高める上で、競合他社に対する優位点として挙げたのが、高速のシリアルインターフェイス規格「JESD204A」に対応した品種の品ぞろえである。JESD204Aとは、A-D変換器ICやD-A変換器ICといったデータコンバータとFPGAを接続するインターフェイス規格である。米国の電子部品関連標準化団体「JEDEC Solid State Technology Association」が策定した。
現在のところ、データコンバータとFPGAの接続には、パラレルのLVDS-DDRインターフェイスや、パラレルのLVCMOSインターフェイスが幅広く使われている。これらのインターフェイス規格に比べて、JESD204Aにはデータ伝送速度を高められ、プリント基板上の配線設計が容易になるといった特徴がある。
「現在は、パラレル接続のLVDS-DDRインターフェイスやLVCMOSインターフェイスが主流である。しかし、今後を見据えたとき、パラレル接続のインターフェイス規格には、プリント基板の配線設計や放射電磁雑音といった観点で限界が見えている。JESD204A規格への転換が始まりつつあり、他社に先んじて対応品種を市場に投入する」(同社)。
新たに市場に投入する製品群の内訳は、分解能が12ビット〜16ビットでサンプル数が最大1.25Gサンプル/秒のD-A変換器ICの製品群「Vega(ベガ)」と、分解能が10ビット〜16ビットでサンプル数が最大130Mサンプル/秒のA-D変換器ICの製品群「Antlia(アントリア)」、分解能が12ビット〜16ビットでサンプル数が最大250Mサンプル/秒のA-D変換器ICの製品群「Tucana(トゥカナ)」である。いずれの製品群も、JESD204Aに対応する。
同社は、JESD204Aを実装したインターフェイスの名称を「CGV(Convertisseur Grande Vitesse)」と呼ぶ。データ伝送速度を最大4Gビット/秒、伝送距離は最大100cmに高めた。JESD204A規格が規定している標準のデータ伝送速度は3.125Gビット/秒、伝送速度は20cmである。
このほか同社は、無縁基地局のシグナルチェーンすべてに半導体部品を展開していることも競合他社に対する優位点に挙げた。例えば、無線基地局に向けたA-D変換器ICやD-A変換器ICのほか、パワーアンプIC、低雑音アンプ(LNA)、ミキサーといった幅広い高周波部品を提供している。
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