XilinxがVirtex-7 2000Tでまず狙う用途は、大規模ASIC開発のプロトタイピングやエミュレーションである。ASIC開発時に、ASIC上に構成する回路を検証したり、試作チップの完成を待たずにソフトウェアの開発を進めたりするために、ハードウェアエミュレータとしてFPGAを使う。実際に、「現時点でVirtex-7 2000Tを発注している顧客企業は、ASICプロトタイピング向けだ」(XilinxのDouglass氏)という。ロジック規模が大きいこの品種を使えば、複数のFPGAを組み合わせて構成したエミュレーションボードを用いる場合に比べて、ASICの回路を複数のFPGAに割り付ける複雑な作業が軽減される上に、FPGA間をボード上でつなぐインタフェースの速度によって処理性能が制限されてしまうことが無いというメリットがある。
次にXilinxが視野に入れるのは、ASICそのものの代替だ。同社は前述の通り、ASICゲート換算で2000万〜4000万ゲートの規模のロジックをVirtex-7 2000Tに搭載できるとしており、そうした大規模ASICの置き換えを狙う。「ASICは開発コストが高騰しており、大規模品では5000万米ドルに達する場合もある。一方で、その巨額の投資を回収できる量産規模のASICは減少傾向にあり、そこにFPGAの商機がある」(同氏)。
同社は2000万ゲートを超える規模のASICの具体例として、無線通信インフラ向けのネットワークスイッチなどを挙げている。ただしそうしたASICでは、極めて広い帯域幅でデータを入出力することが求められる。そこで同社は、スタックド シリコン インターコネクト技術を適用する品種の拡充を進める考えだ。具体的には、パッケージ内に複数搭載するFPGAダイそれぞれに13Gビット/秒動作の高速シリアルトランシーバ(SerDes)回路を集積する品種群「Virtex-7 XT」や、28Gビット/秒動作の高速シリアルトランシーバ回路を単独のダイとして別に用意し、複数のFPGAダイとともに単一のパッケージに納める品種群「Virtex-7 HT」である(図5)。Virtex-7 HTの最大規模品では、入出力帯域幅は2.8Tビット/秒に達するという。
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