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日本の平均年収は717万円と微増、転職志向はやや軟化エレクトロニクスエンジニア給与/意識調査 2011年

EE Times Japanが毎年実施している「エレクトロニクスエンジニア給与/意識調査」。2011年10月に実施した最新の調査結果を報告する。年収の平均は、リーマンショック後の2009年に大幅に落ち込んだものの、2010年は微減にとどまっており、今回ついに増加に転じた。

» 2011年12月09日 19時50分 公開
[EE Times Japan]

 EE Times Japanが2011年10月に実施した「エレクトロニクスエンジニア給与/意識調査」の結果がまとまった。この調査によると日本のエレクトロニクスエンジニア(以下、エンジニア)の平均年収は717万円で、前年の700万円から2.4%の微増になった。

 一昨年からの平均年収の推移を振り返ってみよう。2009年は、2008年のリーマンショックの影響で企業の業績が悪化し、日本のエンジニアの平均年収も前年から6.2%減(金額は47万円)と大幅に低下した。2010年は、エレクトロニクス産業の回復が進み、平均年収は前年から1.5%(11万円)の微減で済んでおり、下げ止まった感があった。そして2011年は、ついに減少から増加に転じたわけだ。

図1 図1 日本のエレクトロニクスエンジニアの平均像 いずれも算術平均値である。

かつての水準にはまだ隔たり

 ただ、平均年収のこの推移だけでエンジニアの給与が上昇傾向に転じたと判断するのは、早計かもしれない。調査の回答者の平均年齢を見ると、前年の43.8歳から今回は46.9歳に高まっており、約3歳の差があった。年齢に沿った賃金上昇カーブに準じて、年収の平均値が高まっただけとみることもできるだろう。

 実際に、年収の平均値ではなく中央値を見てみると、今回は675万円で、前年と変わらない。それに対し、本調査を開始した2005年は中央値が750万円だった。同年の平均年収は745万円と今回に比べて高く、平均年齢は42.4歳と比較的低かった。

 過去1年間の給与の増減はどうだろうか。今回の調査で「増えた」という回答者は24%で、前年調査の23%とほぼ変わらない。一方で「減った」は39%で前年の46%から7ポイント減少し、「変わらない」は37%で前年の31%から6ポイント増加した。上昇傾向には戻っていないが、下げ止まったことは確かなようだ。

雇用情勢は不透明

 日本の電機大手各社の2011年度上期(2011年4〜9月)の決算を見ると、重電や社会インフラの事業については各社が比較的堅調な業績を示しているものの、テレビを中心とするデジタル家電機器の事業は押しなべて業績が低迷しており、半導体などのデバイス事業も振るわない。

 この先も、企業を取り巻く事業環境は不透明だ。東日本大震災やタイの大洪水といった災害の影響がまだ残る分野がある上に、欧州の金融危機や、米国で深刻化する財政赤字など、世界経済は混迷を極めている。

 こうした状況を受けて国内の電機各社は、収益改善と事業体質強化を目的に製造拠点の再編を実施したり、人員の削減を推し進めたりしているのが現状だ。エンジニアの雇用も安定しているとは言い難い。

転職志向がわずかに軟化

 そうした中、エンジニアの意識にわずかながら変化が見られる。同じ会社に長く勤めたいかを問う設問では、「そう思う」が74%と、前年から4ポイント増加した。さらに、自分の置かれている状況が他の職種と比べて同等以上かと聞いた設問でも、「そう思う」が47%で前回から4ポイント上昇している。

 転職に対する意向を尋ねる設問では、転職を「すぐにでもしたい」「2〜3年以内にしたい」「当面はないが、いずれ考えたい」とする回答者が前回調査からそれぞれ1ポイントずつ減少し、その分、「将来も転職することはない」が3ポイント増加した。

所属企業への評価は回復せず

 しかしこれは、エンジニアが現在の所属企業に対する評価を高めた結果というわけではなさそうだ。エンジニアの意識を見ていこう。

 意欲の高いエンジニアが仕事を選択するに当たって重視する要素の1つに、その職場で革新的なことに取り組めるかどうかがある。ところが昨年の調査では、「私の会社は革新性や創造性に力を入れている」と評価したエンジニアは40%で、前回から8ポイントも下がって過去最低を記録した。今回の調査でも41%にとどまっており、企業の取り組みが進んでいないことがうかがえる。

図1 図2 日本のエレクトロニクスエンジニアの意識 各項目に対して4段階(非常にそう思う、ある程度そう思う、あまりそう思わない、全くそう思わない)で評価してもらい、そのうち上位2段階(非常にそう思う、ある程度そう思う)を合計した比率を示した。(クリックで拡大表示)

 他の評価軸でも同じ傾向だ。昨年、「私の会社の技術は最先端のものである」とした回答者は37%で、前回から11ポイント減少し、やはり過去最低の数値だった。今年は40%と3ポイント戻したものの、以前の水準には届かない。「私の会社はエンジニアの革新的な成果に報いている」と回答したのも29%で、調査開始後初めて3割を切った昨年の28%と同レベルだった。

 企業はエンジニアの転職志向の軟化に甘えず、エンジニアが意欲的に仕事に取り組めるような環境作りを進めるべきだろう。

 なお米国のEE Timesが昨年に続いて今年も北米、欧州、中国、インドの4 地域で同様の給与/ 意識調査を実施している。結果がまとまり次第、日本との比較分析記事を本サイト上で掲載する予定だ。

調査方法

  • 対象:アイティメディアが発行する「電子機器設計/組み込み開発 メールマガジン」の読者
  • 期間:2011年10月4〜23日
  • 有効回答者数:993件

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