急加速による事故が報告された2003年型「カムリ」のアクセルペダル位置センサーの一部で、内部にスズのウィスカ(金属表面に成長するひげ状の結晶)が見つかった。アクセルペダルの踏み込み方によっては、ドライバーの意に反した急加速が起きる可能性があるという。
「アクセルペダル位置センサー(電子スロットルセンサー)の一部に、回路の短絡を引き起こす可能性があるSn(スズ)ウィスカの発生が見られた」――NASA(米航空宇宙局)は、2011年9月にメリーランド大学カレッジパーク校で開催された「国際スズウィスカシンポジウム(International Tin Whisker Symposium)」で、トヨタ自動車製車両のアクセルペダル位置センサーを再検証した論文を発表し、このように述べた。センサー内部でSnウィスカが発生すると、アクセルペダルの踏み込み方によっては、ドライバーの意に反した急加速が起きる可能性があるという。
Snウィスカは、急加速による事故が報告された2003年型「カムリ」のアクセルペダル位置センサーの他、同センサーと類似した機能を持つ2種類の部品でも発見されている。ただし、アクセルペダル位置センサー以外の部品について、動作の不具合は報告されていない。
問題となっているアクセルペダル位置センサーは、2002〜2006年型モデルのカムリに搭載されている。NASAが再検証に使用したカムリは、8万2000マイル(約13万2000km)を走行したものだった。このカムリを提供したオーナーは、「アクセルペダルを踏んだら、『ガソリンが無い』と応答が返ってきたり、突然猛スピードで発進したりするので、とても運転できる代物ではなかった」と述べている。この車両のアクセルペダル位置センサーの内部には、少なくともウィスカが17カ所で発生しており、そのうち1つは接続を短絡させていた。
同センサーをさらに調査した結果、Snウィスカが発生する現象は、ある特定のロットで起きることが判明した。Snウィスカによる回路の短絡がこれらの事故を引き起こしたとすれば、自動車業界が掲げる安全性に対して懸念が生じることになる。
NASAの30ページに及ぶ論文では、Snウィスカの物理的作用や、ウィスカ検出のガイドラインなどについても詳述している。
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