富士通研究所によれば、同社の技術は多段中継において発生する映像品質劣化を抑止できる方式として優れているという。「2012年3月にSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers:映画テレビ技術者協会)*1の推奨指針『SMPTE RP 2050-1:2012』として採用された(図5)。今後は、他社も映像伝送システムに当社の技術を採用しやすくなり、テレビ放送における色にじみの問題が徐々に改善されていくだろう」(中川氏)。
*1) SMPTEは1916年に設立された世界の放送機器の技術規格を制定する機関。米国に本部を置き、テレビ放送、映画、音声記録などに関する400以上の技術規格を策定してきた。
RP 2050の特長は、色にじみを起こさないことだけではない。従来機器と相互接続でき、低コストの実装が可能な点が従来技術とは異なるのだという。
特に重要なのが相互接続性だ。「色にじみの防止はもちろんだが、相互接続性を持たせるところで一番苦労した」(中川氏)。図1に示したように、色にじみは複数の中継所を経ることで発生する。全ての中継所の映像伝送装置を一気に交換することは非現実的だ。さらに、新型伝送装置と旧型伝送装置を並行して運用しなければならないとしたら、普及にコストが掛かりすぎる。相互接続性があれば、段階的に旧型から新型への置き換えが容易になる(図6)。
なお、RP 2050以外にも色に関する映像劣化を防ぐ技術は存在する。色に関する劣化は「色にじみ」と「色ずれ」の2つに大別できる。色にじみは図4に示したように色成分の縮小・拡大処理によって起こる劣化である。例えば他社が開発した「完全再構成技術」を利用すると色にじみを防ぐことができる。
ただし、完全再構成技術には欠点があった。従来型の映像伝送装置と接続したとき色ずれが発生することだ。RP 2050であれば、色にじみと色ずれのいずれも起こさないという。
富士通はRP 2050で定められた色にじみ抑止技術を採用した映像伝送装置を既に製品化済みである(図7)*2)。
*2) 富士通の映像伝送装置の国内シェアは国内ではトップだという。米CBSはニュース放送に富士通のIP-9500シリーズを採用しており、映像の画質が高いことをうたっている。
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