アイキューブド研究所は、実際の風景を見たときと同じような感動を覚える映像を作り出すことをコンセプトにした、新しい超解像技術を発表した。
アイキューブド研究所は2013年2月、大型スクリーン向けに映像クリエーション技術「ISVC」を発表した。ISVCとは、「Intelligent Spectacle Vision Creation:脳内感動創造」を意味している。その名の通り、実際の風景や光景を見たときと同じ感動を味わえるような臨場感を映像に加えることが、ISVCのコンセプトだ。大画面のホームシアターやパブリックビューイングなど、プロジェクタを使って投影する用途をターゲットとする。
「技術的な詳細は明らかにはできない」(アイキューブド研究所)としているが、簡単に言えば、フルHDの映像信号を4Kにアップコンバートする際*1)、アルゴリズム処理を行って映像の細部の情報を補完するというもの。これによって、例えば尾根や山肌、河原の石の1つ1つや水面のさざ波などを、160インチを超えるような大型スクリーン上でも、より鮮明な映像として再現できる。そのため視聴者は、実際にその風景を見ているかのように、被写体そのものが持つ迫力を感じ取ることができるという。
*1)もともと4Kのコンテンツにアルゴリズムをかけることも可能である。

左が一般的な超解像技術で処理した4Kの映像。右がISVCで処理したもの(どちらもフルHDから4Kにアップコンバートしている)。記者説明会の会場で行われたデモンストレーションでは、160インチや450インチの大型スクリーンに投影してこれらの映像を比較したが、巨大なスクリーン上でも違いは明確に見て取れた。(クリックで画像を拡大)アイキューブド研究所は、2011年5月に「ICC(Integrated Congnitie Creation:統合脳内創造)」という技術を発表している。ICCは、同社が“光クリエーション”と表現しているように、自然界の光を再現し、人間が目で直接見ているものにできるだけ近い映像を作り出す技術である(関連記事:4K映像を“創造”──シャープ、大型液晶パネル新技術を披露)。
ICCは、60インチの4Kディスプレイを対象にした技術だった。このサイズであれば1mm角に9画素配置することができ、自然界の光を再現するのに十分だったからだ。アイキューブド研究所の代表取締役社長を務める近藤哲二郎氏は、「ICCによって目で見た風景に近い映像を再現することには成功した。だが、何kmにも広がる大自然の迫力を、60インチというサイズでは表現できない。そのため、次の段階としてスペクタクル(迫力)を再現できるような技術が必要だと考えた」と説明する。そこで、大型スクリーンでも高精細の映像を投影できる技術として、ISVCの開発に取り組んだという。
ISVCの製品化については、「チップ化は可能だが、今後パートナーとなるメーカーの希望に沿った形で行う」(近藤氏)としている。同氏は、「具体的なロードマップは、まだ未定だ。ISVCでどのようなビジネスが展開できるかは、今回の発表の反応を見て検討する」と付け加えた。
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