Intelは、32nmプロセス技術を適用したスマートフォン向けプロセッサ「Clover Trail+」を発表した。スマートフォンやタブレット端末に注力する同社だが、果たしてこれらの市場で存在感を示せるのか。Clover Trail+がその試金石となりそうだ。
Intelは、携帯電話に関する国際展示会「MWC(Mobile World Congress) 2013」(2013年2月25日〜28日、スペイン・バルセロナ)において、32nmプロセス技術を適用した新型のスマートフォン向けプロセッサ「Clover Trail+(開発コード名)」を発表した。同社にとっては、モバイル向けプロセッサのサプライヤとしての実力を示す重要な製品だと言える。また同社は、2013年後半に後継品となる22nm版の「Mary Field(同)」を発表する予定であることも明らかにした。
Intelのモバイル機器向けプロセッサといえば「Atom」だが、2012年のMWCが開催された時点では、Atomベースの製品はスマートフォンのデザインウィンを獲得できていなかった。スマートフォン向けの市場では、QualcommやNVIDIAをはじめ、ARMのプロセッサコアをベースとするSoC(System on Chip)のメーカーが依然として優位性を確保している。そうした中、PC業界の巨人であるIntelは、競合他社に対する遅れを取り戻すべく取り組みを進めている状況にある。
Intelは、既にClover Trail+の出荷を開始している。同製品は、デュアルスレッドに対応可能なデュアルコアのAtomチップである。Imagination TechnologiesのデュアルコアGPU「SGX544MP2」を採用したことにより、Atomベースの既存のスマートフォン向けプラットフォーム「Medfield」に比べて、3倍のグラフィックス性能を実現しているという。動作周波数は最大2GHzで、1080p/30fpsのビデオデコード/エンコードにも対応する。
Intelの広報担当者によれば、Clover Trail+は、LenovoのAndroid対応スマートフォン「IdeaPhone K900」に採用されている。IdeaPhone K900は、近々、中国以外の国でも販売される予定だという。
現在、Medfieldを搭載した携帯電話機は10機種あり、主に新興市場を中心とした世界20カ国で販売されている。今後、Intelは台湾のAcerやASUSTeK Computerのほか、インドやアフリカを拠点とする機器メーカーなど、同社の「Lexington」を採用しているメーカー各社を対象に、エントリーレベル市場向けのスマートフォン用プラットフォームを提供していく予定だ。
またIntelは、2013年中に新型Atomコアの発表を予定している。同社の製品としては初めてアウトオブオーダー実行をサポートすることにより、性能の向上を実現するという。この新型コアは、スマートフォン向けのMary Fieldや、タブレット端末向けのクアッドコアチップ「Bay Trail」などと同様に、22nmプロセスのSoCシリーズとして投入するという。
Intelは2012年末に、動作周波数が1.8GHzでデュアルスレッド対応のタブレット端末向け製品「Clover Trail」を発表していた。同製品は、Windows 8を採用している8社の製品でデザインウィンを獲得している。
Intelの広報担当者によると、同社がInfineon Technologiesから買収した無線通信チップ事業部門は、2013年6月をめどに、Intelにとって初となる音声/データ通信対応のマルチモードLTEチップの出荷を開始する予定だという。現在は、データ通信のみをサポートするシングルモードチップを出荷している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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