InfiniiVision 6000Xシリーズは、コストパフォーマンスを追求したオシロスコープである。4000Xシリーズに搭載しているASICを共有するなどして開発や部品のコストを抑えた。この結果、6GHz帯域ながら約350万円を実現した。「市販されている同帯域の製品に比べて価格は半額以下」という。
6000Xシリーズは、12.1型マルチタッチ静電容量式タッチスクリーンを搭載している。測定機能としては波形観測の機能を強化した。毎秒45万回の波形更新を可能とし、ゾーントリガ機能などによって異常信号の観測、切り分けが容易となった。さらに、デジタル信号のジッタやアイダイヤグラム評価を直感的に行える解析オプションも提供している。カラーグレード表示によって、周波数や振幅、発生頻度などが色分けされて表示されるため、デバッグの効率を高めることが可能となる。日本語を含む14か国語に対応するボイスコントロール機能も搭載した。測定作業のために両手がふさがっている場合でも、音声でオシロスコープを操作することができる。
6000Xシリーズは、6台分の測定機能を1台に搭載しているのも特長の1つだ。その機能はオシロスコープ、ロジックアナライザ、プロトコルアナライザ、任意波形発生器、デジタル電圧計そして10桁カウンタである。これらの機能を、重さが6.8kg、奥行きが15.4cmの筐体に収納している。消費電力も最大200Wと競合製品に比べて極めて小さい。
6000Xシリーズは、アナログ帯域が1GHz、2.5GHz、4GHzそして6GHzの4バージョンがある。それぞれにアナログ2チャネルまたは4チャネルのDSOモデル、およびアナログ2チャネル+デジタル16チャネルまたはアナログ4チャネル+デジタル16チャネルのMSOモデルを用意した。サンプリングレートは20Gサンプル/秒(2チャネル時)である。
オシロスコープの市場規模は全世界で約1200億円とみられている。調査会社によれば2002〜2013年の年平均成長率は4.5%である。この中でアジレントのオシロスコープ事業は11%と高い伸びを続けている。2013年における同社のシェアは33%とみられ、首位のテクトロニクスに肉薄する。
アジレント・テクノロジーの社長を務める梅島正明氏は、「日本のオシロスコープ市場は約100億円である。アジレントでは『サンプリング』、『広帯域』、『汎用・ミドル』、『エコノミ』と4つのカテゴリに分けて市場を分析している」と話す。すでにサンプリング製品や広帯域製品におけるシェアは首位を確保し、エコノミ製品でもトップに迫る。今回発表した2シリーズは、主力市場である汎用・ミドル領域でのさらなるシェアアップを狙って投入した新製品である。汎用・ミドルレンジでのシェア拡大を図ることで、オシロスコープ市場全体でも、トップシェアを目指している。
なお、アジレント・テクノロジーは2014年8月より、ライフサイエンスや化学分析の事業部門を切り離し、電子計測事業は専門会社「Keysight Technologies」として事業を始める予定だ。梅島氏は、「事業規模としては半分となるが、新体制になれば全ての経営資源を計測機器とそのキーデバイスの開発に投資することが可能となる。これからも、市場のニーズに応えて、(独自のA-DコンバータICやASICなど)コアとなる新デバイス開発とそれを搭載した新製品を開発し、市場に投入していく」と語った。
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