スマートフォンが自動車内でも使われ始めたことで、そうした用途に対応する車載インフォテインメントシステムの開発が必須になりつつある。それに伴い、車載用プロセッサ市場が大きく成長する見込みだ。
米国の市場調査会社であるIHSによると、スマートフォンが自動車内でも使われるようになったことで、車載インフォテインメント業界に極めて大きな影響が及んでいるという。同社はその理由について、「スマートフォンは、現在自動車の車内でも使われているように“ユビキタスな存在”になった。そのため、スマートフォンと連携するヘッドユニットやテレマティックスポータルを開発する必要性が生じている。これが、コンポーネントに搭載されるプロセッサの需要を変化させる要因となっている」と説明する。
IHSの見解によると、半導体メーカー各社はこうした状況を受けて、さまざまな課題に直面しているが、チャンスも得ているという。中でも自動車のテレマティクスポータルヘッドユニットは、半導体メーカーにとって最も将来性が高いと考えられている。こうしたヘッドユニットは、スマートフォンをモバイル無線アクセス用のブロードバンドモデムとして利用することにより、自動車をインターネットに接続する機能を担う。
IHSの予測によると、テレマティクスポータルヘッドユニットに搭載されるプロセッサの売上高は、2013年には1億2800万米ドルをわずかに下回る程度だったが、2018年には5億800万米ドルに増大する見込みだという。自動車がインターネットにつながり、それを介してさまざまなサービスが提供される“コネクテッドカー”の台頭により、このような用途の重要性が一段と高まっていくとみられている。IHSでマイコン部門担当シニアアナリストを務めるTom Hackenberg氏によると、車載インフォテインメント向けプロセッサ市場全体のうち、テレマティクスヘッドユニットが占める割合は、2013年にはわずか8%だったが、2018年には30%に増大する見込みだという。
一方、2013年の車載プロセッサ市場において売上高が最も高かったのは、ナビゲーション用ヘッドユニットで、3億6800万米ドルだった。しかし、2018年には大幅に減少して5100万米ドル程度になるとみられている。その主な要因は、スマートフォンがナビゲーションを標準機能として搭載するようになったためだと考えられる。
OEM各社は、ユーザーのニーズの変化に対応すべく、統合型システムを提供する方向へと進んでいる。インフォテインメントシステムには、ネットワークディスプレイや、制御機能を備えたハンドル、大型タッチスクリーンなど、さまざまな機能が搭載されるようになるだろう。さらに、自動車でユーザーのスマートフォンを最大限に活用することで、車内のさまざまな統合型システムに接続し、より優れたユーザーエクスペリエンスを提供することも可能になる。
ただし、このような傾向が高まれば、アフターマーケットメーカーの負担が増大することになる。あらかじめ組み込まれ、高度に統合された既存のインフォテインメントシステムは、十分に優れたユーザーエクスペリエンスを提供しているが、さらにそれ以上のレベルを実現しなければならないというプレッシャーにさらされることになるためだ。
OEM各社は今後、メディアリッチな自動車の開発を追求していく上で、極めて重要な課題に直面するだろう。豊富な機能を搭載したインフォテインメントシステムには、不具合の発生や、重要な電子システムの故障などといったリスクが伴う。しかし、IHSのアナリストであるHackenberg氏によれば、さらに重要なのが、ドライバーの注意散漫によって生じるリスクが非常に大きいという点だ。OEMは、このリスクとユーザーエクスペリエンスをてんびんに掛けなくてはならないだろう。両者の最適なバランスを考えることは、次世代の車載インフォテインメントを開発するに当たり、設計の課題となるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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