Del Vecchio氏は「生体システムには、神経細胞以外にも多くの種類の“回路”がある。例えば、遺伝子発現を制御する遺伝子回路の他、朝何時に起きるといった、生物の時間管理を制御する細胞などである」と述べた。
これまで、ほとんどの研究チームによるバイオ回路は、酵母細胞かバクテリアの細胞のいずれかを用いて何かを感知するように設計されてきた。Del Vecchio氏は「バクテリアは、かなり研究しやすい。細胞核を持たないからだ」と述べている。
上述したように、バイオ回路は、バイオセンサーなどさまざまな用途に使える可能性がある。ここで重要なのは、例えばがん細胞と正常な細胞を正しく見分けることだ。健康な細胞を、がん細胞と間違えて“攻撃”しては何にもならない。このためには、バイオ素材で製造した堅ろうな情報処理回路が必要になるという。
バイオ回路の難しい点は、電子回路と違って、“入力”から“出力”を想定できないことが多い点だ。電子回路は、1つ1つの部品が正しく配線され、情報が意図した方向にきちんと伝わる。だが、バイオ回路では、いわば“部品が細胞内で、溶液中に浮遊している状態”なので、情報の伝達方向が予測できないのである。
Del Vecchio氏は、「バイオ回路で“X”を出力するよう設計しても、“Y”と出てしまったら大きな問題になる」と述べている。
同研究チームは、こうしたリスクを下げられる可能性がある“負荷ドライバ”を製造した。電子回路で使われる負荷ドライバの用途に似ていて、信号と出力のバッファのような役目を果たすものだ。
彼らが開発中のバイオ回路はまだ開発の初期段階にあり、実用化には何年もの時間がかかるかもしれない。だが、幅広い用途に使える可能性がある。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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