ルネサス エレクトロニクスは2014年12月、16nmプロセス世代以降の車載情報機器用SoC(System on Chip)向け回路技術を開発したと発表した。
ルネサス エレクトロニクスは2014年12月16日、16nmプロセス世代以降の車載情報機器用SoC(System on Chip)向け回路技術を開発し、同技術を用いて16nmプロセスSRAMを作成し、0.7Vの低電圧動作条件で641p(ピコ)秒の高速読み出しを実現したと発表した。
16nmプロセスは、これまでのプレーナー型MOSFETよりも、消費電力の抑制や性能向上が図りやすいフィン構造を導入した新しいFinFETが用いられる。ただ、「FinFETでは、回路定数の最適化を行うことが困難であり、新たな設計回路技術の開発が課題だった」(ルネサス)。そこで、ルネサスは今回、FinFET用に低電圧でも安定して高速読出し/書込み動作が可能となる、新しい回路技術を開発。この回路技術を採用したSRAMを16nmプロセス FinFETで試作し、0.7Vの低電圧動作条件にて、641p秒の高速動作を確認したとする。
開発した回路技術の概要は次の通り。
半導体プロセスの微細化とともにデバイス素子のばらつきが増大することで、デバイスの下限動作電圧が悪化する傾向があり、その対策として回路的に工夫する回路技術(以下、アシスト回路)が導入されている。従来は、読出し動作時の安定動作を確保するため、アクセス時にワード線の電圧をわずかに下げる工夫をしていた。しかし、この方式では、書込み時の動作マージンの悪化や、読出し速度が著しく低下するなどの課題があった。
これに対し、ルネサスは、FinFETの特徴を生かし、これまでとは逆にワード線電圧をわずかに昇圧し、読出し時と書込み時でそのパルス幅を変えるというアシスト回路方式を採用。これにより、読出し時と書込み時の動作マージンを確保しつつ、高速な読出し動作を実現した。
FinFETでは、これまでのプレーナー型MOSFETとは異なる素子ばらつきがある。アレイ状に並んだメモリセルの中央部と端部で、読出し動作時にビット線に流れる電流にオフセットが生じることにより電流差が発生する。そのため、読出し時のセンスアンプマージンが確保できず、デバイスが誤動作する可能性があり、この電流差を十分に考慮したマージン設計を行う必要がある。
ルネサスでは、この電流オフセットを試作したテストチップで実測することで定量的に確認。その上で、この実測結果から最適な動作マージンを確保できるように回路の微調整を行うことが可能にした。
ルネサスでは、開発したアシスト回路技術について、「今後プロセスの微細化が進むにつれて困難になると予想される速度と安定動作の両立を実現しており、将来の先進運転支援システムや自動運転に求められるリアルタイム画像処理の性能向上に大きく貢献できる。今回開発したSRAMを16nm FinFETプロセスのルネサスの最先端SoCに採用し、いち早く提供する」としている。なお、同社は、2015年にも発表する予定の車載情報機器向けSoC「R-Car」の第3世代品に、16nmプロセスを採用する方針を2014年11月の「electronica 2014」などで表明している(関連記事:ルネサスの車載情報機器向けSoC、第3世代「R-Car」は16nmプロセス、最大8コアに)。
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