Samsungは、2013年2月に開催された「MWC 2013」において、Visa Europeとの協業により、最新のGalaxyスマートフォン向けにNFC決済システムを開発することで合意したと発表している。また、その3カ月後となる2013年5月には、Mastercardとの間でも同じような契約を結んだ。当時は、Samsungが、2014年中に「Galaxy S5」にNFC決済システムを導入するのではないかと見られていた。
しかし、モバイル決済市場は非常に複雑化していて、通信事業者からの反発や、決済システムの提供方法の複雑さ、セキュリティ上の懸念など、問題が山積みだった。このためSamsungや機器メーカー各社は、独自のNFCモバイル決済サービスの導入を諦めることになった。
現在のSamsungにとっての最大のチャンスは欧州市場かもしれない。欧州ではApple Payには、まだ対応していないが、非接触式ICカードの流通数と、決済端末の数は世界一である。欧州では10年以上も前からEuropay MasterCard Visa(EMV)という規格が導入されていることから、NFCモバイル決済に対するインフラは整っている。2014年9月の時点で、欧州全土には米国の6倍以上に相当する150万台の非接触型の決済端末が導入されていて、流通するクレジットカードのうち1/5が非接触決済に対応していた。
Samsungは今後、非接触決済のエコシステムで優位に立ちたい通信事業者からの強い圧力に抵抗しなくてはならないだろう。過去数年間、通信事業者は独自のSIMカードをセキュリティモジュールとして用いて、金融機関と共に、モバイル決済システムの立ち上げに取り組んできた。
SamsungがSamsung Payで成功するためには、ユーザーが信頼でき、銀行が加入したがるようなシステムが必要となる。さらに、Appleのように、通信事業者を“方程式”から外さなくてはならないだろう。そうしなければ、Samsung Payが、顧客から支持を得られない“試作版”で終わってしまう可能性もあるのだ。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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