Wi-SUNの機能を機器に搭載するには、一定の技術力が必要になる。BルートやHANなど用途に応じて通信を最適化できる柔軟性を持つWi-SUNは、さまざまな通信プロファイルが用意される。そのため、Wi-SUN規格に準拠した機器を開発するには、ハードウェア、ソフトウェア両面でさまざまな技術ノウハウを要するわけだ。
これに対し、アナログ・デバイセズは、Wi-Fiなど他の無線規格同様、チップ/モジュール、ソフトウェアを購入することで、短期間に規格準拠機器を開発できるよう、ターンキーソリューションの構築に力を入れている。「ICメーカーであるアナログ・デバイセズ1社だけで、ソリューションを構築/提供することは不可能であり、他のWi-SUNアライアンスメンバーや協力企業を頼らなければならない」(ジョイス氏)とし、外部企業との連携を積極的に行いソリューション構築を行っている。
その1例が、無線機器/モジュールやソフトウェア、無線ネットワークシステムの開発支援サービスを手掛ける企業との連携だ。ADF7023-Jをベースに、Wi-SUN準拠機器の開発を目指す顧客に対し、無線領域で高度な技術力を持つパートナー企業を紹介することでより容易に開発を実現させようという試みだ。いわば、エコシステムでWi-SUN開発のターンキーソリューションを実現させようというもの。現状、8社のパートナー企業とアライアンスを結び相互連携を図っている。
積極的に外部企業との関係強化を行ってきた結果、顧客にターンキーソリューションを提供できる体制が整っただけでなく、さまざまなWi-SUN無線モジュール機器や開発キットで、ADF7023-Jの採用が拡大。ジョイス氏は、「既に8社を超えるモジュールベンダーがADF7023-Jを採用し、Wi-SUNの無線トランシーバICとしてデファクトの地位を固めつつある」とする。
実際、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)と共同開発したサブギガヘルツ無線通信プラットフォーム「Renesas/ADI SUN Solution for RL78 & ADF7023-J」が2014年5月に、Wi-SUNのECHONET Liteプロファイル認証を取得し、同認証取得試験の際に実施される相互接続性試験に用いる参照標準無線機(CTBU)になっている。
「今後もさらにパートナーを増やし、さまざまなプロファイルに対応するなどスタンダードなソリューションの提供を目指す」とし、このほど策定されたHAN用プロファイルなどへの対応を進めていく。
また同時に、無線トランシーバの新世代品の開発も行っていく。「ADF7023-Jなどアナログ・デバイセズの無線トランシーバの強みである感度の高さ、耐ノイズ性をさらに向上させるだけでなく、消費電力、コストもさらに低減し、より魅力的なWi-SUN機器を実現するデバイスとして近く投入したい」(ジョイス氏)とする。
Wi-SUNは前述した通り、東京電力などが採用を決めるなどし普及に向け機運が高まりつつあるが、国内に限られた話であり、海外とは温度差が残る。ジョイス氏は「これまでは、電力メーターに関する部分での普及に重点が置かれ、国内中心の普及啓もう活動だった。新たにHAN用プロファイルが策定され、M2MやIoTの用途でもWi-SUNが使えるようになったことで、海外での普及活動も本格化していくだろう。M2M/IoTでは、消費電力の観点などからサブギガヘルツ無線が最適な無線であり、Wi-SUNは広く普及していく可能性がある。日本国内で取り組んできたように、海外でもさまざまな企業との連携を図り、Wi-SUNの普及に貢献したい」としている。
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