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920MHz帯、Wi-SUN普及に向けたアナログ・デバイセズの意気込みワイヤレスジャパン 2013

アナログ・デバイセズはワイヤレスジャパン2013(2013年5月29〜31日、東京ビッグサイト)で920MHz帯無線、スマートユーティリティネットワーク向け無線通信仕様「Wi-SUN」対応機器の開発に向けたソリューションの展示を行った。

» 2013年05月30日 18時30分 公開
[竹本達哉,EE Times Japan]

 アナログ・デバイセズ(以下、ADI)は、920MHz帯無線の普及拡大を目指した活動を展開している。ワイヤレスジャパン2013(2013年5月29〜31日、東京ビッグサイト)でも、RFICなどを提供する半導体メーカーとしての枠を超え、920MHz無線の利用促進を先導する提案、啓発活動を行った。

 920MHz帯無線は2012年7月に、日本国内で利用可能となったサブギガヘルツ帯無線だ。特に920MHz帯は、無線LANなどで利用される2.4GHz帯無線と比べ、電波の到達性が高く、干渉の少ない周波数帯でもあることなどから、スマートメーターなど遠隔計測装置「テレメータ」やHEMS(家庭用エネルギー管理システム)といった用途の通信「スマートユーティリティネットワーク」(SUN)での利用拡大が見込まれている。

自由度、拡張性が高いIEEE802.15.4g

 SUNでの無線通信規格としては、「IEEE802.15.4g」が策定されている。物理層規格である同規格は、地域ごとに異なるサブギガヘルツ帯の各周波数や2.4GHz帯などでも使用できるほか、複数の変調方式が選択できる拡張性、柔軟性などを持つ。この点は、無線LANなどのこれまでの一般的な無線通信規格と異なる点だ。

 変調方式などに自由度がある一方で、テレメータなどの機器を開発する場合には、最適な変調方式や無線パラメータなどを選択、最適化しなければならない。無線LANなどでは、規格にすぐに準拠できるターンキー型のワンチップICが開発されているが、920MHz帯無線では、そういったターンキー型ICは存在せず、開発に一定の技術力を要する。

「ICだけで“無線機”は作れない」

日本国内の920MHz帯に最適化した無線送受信IC「ADF7023-J」

 サブギガヘルツ帯無線の将来性を高く評価するADIは、早くからサブギガヘルツ帯無線用送受信ICを製品化。日本国内の920MHz帯に最適化した無線送受信IC「ADF7023-J」も展開している。低消費電力で、ノイズに強いといった特徴を備える。だが、ADIエネルギーストラテジックビジネスセグメントの椿原潤吾氏は「ICがいくら優れていても、ICだけで“無線機”は作れない。ユーザーの要求を満たすには、無線モジュールメーカーとのパートナーシップが必要」とし、積極的に無線モジュールメーカーなどとの連携を進めてきた。

920MHz帯無線ソリューションを紹介

ワイヤレスジャパン2013 アナログ・デバイセズブースで紹介された立山科学工業の無線モジュール (クリックで拡大)

 ワイヤレスジャパン2013でも、ADIブースの大部分をパートナーが提供する920MHz帯無線ソリューションを紹介するスペースに割き、“IC”ではなく“ソリューション”の提案を前面に押し出した。

 ブースで紹介したパートナーは、上田日本無線、エディックシステムズ、CMエンジニアリング、立山科学工業、テセラ・テクノロジー、ワイヤレス・デザインの6社。無線モジュールメーカーだけでなく、複数の無線機を使ったネットワーク構築支援や、カスタムの無線モジュールの開発支援を行う企業も含まれ「多様なニーズに応えられる体制が整っている」(椿原氏)という。

「Wi-SUN」の普及、啓発活動も

椿原潤吾氏(左)とアナログ・デバイセズブースを激励に訪れたWi-SUNアライアンスのChair(議長)のPhil Beecher氏 (クリックで拡大)

 さらに、ADIは、「Wi-SUN」の普及、啓発活動にも熱心に取り組む。Wi-SUNは、高い自由度で選択できるIEEE802.15.4gの上位層の構成を、用途ごとに最適化した通信仕様。仕様を決めることにより、相互接続性が確保できる。いわば、Wi-SUNは920MHz帯、SUN分野でのWi-Fiに当たる。ADIは、Wi-SUNを策定し、相互接続性試験などを実施する業界団体「Wi-SUNアライアンス」の創設メンバーの1社して、仕様策定にも深く関わってきた。椿原氏は「Wi-SUNが普及することにより、相互接続性を持つ機器をより容易に開発できる環境が整う。今後もWi-SUNアライアンスの活動に積極的に参加していく」としている。

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