ルネサス エレクトロニクスは、16nm FinFETプロセスを用いてSRAMを試作したと発表した。プレーナ型MOSFETを使う場合に比べて低い動作電圧で高速読み出しに成功しているが、一方でFinFETと、微細化プロセスを用いたことによる課題も増えている。
セミコンダクタポータルが主催した「SPIフォーラム」(2015年1月30日、東京都内)では、ルネサス エレクトロニクス 第一ソリューション事業本部 コア技術事業統括部 設計基盤ライセンス推進部 部長の新居浩二氏が登壇し、TSMCの16nm FinFETプロセスで試作したSRAMについて語った。
同SRAMは、16nmプロセス以降の車載情報機器用SoC(System on Chip)向けの回路技術を用いて作成されたもの(関連記事:ルネサス、16nm FinFETを用いたSRAMを開発)。標準的な電源電圧よりも20%低い0.7Vで、641ps(ピコ秒)の高速読み出しを実現し、動作電力を約40%削減したという。ルネサスは、この開発結果を、「IEDM(International Electron Devices Meeting) 2014」(2014年12月15〜17日、米国カリフォルニア州)でも発表している。
ルネサスにとって、車載は最も注力する分野の1つである。主なターゲットは、車載インフォテインメントシステムだ。2020年には、カーオーディオやカーナビゲーションシステム、ADAS(運転支援システム)などを全て統合した「統合コックピット」の実現を目指している。統合コックピットは、2014年9月に開催したプライベート展「Renesas DevCon Japan 2014」で初めて披露した。
統合コックピットのような車載インフォテインメントシステムでは、非常に高性能なリアルタイム処理が要求される。こうした処理が可能なマイコンを実現するには、高性能なSRAMが欠かせないと、新居氏は話す。そのため、消費電力を抑えつつ高性能化を図れるFinFETは、SRAMにとっても魅力的だという。ルネサスの車載情報機器向けSoC「R-Car」シリーズでは、世代が進むごとにSRAMの搭載容量が増加している。量産体制に入ろうとしている第2世代(Gen 2)R-CarのSRAMの容量は100Mビットを超え、開発中の第3世代(Gen 3)では1.5Gビット以上を狙う。
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