こうした時間反転型方式での中継器は、線形光学素子、単一光子源、光子検出器、アクティブフィードフォワード技術などの光デバイス/技術を使用するが、いずれも要素技術に対する原理検証を終えていて、「現状では物質量子メモリ研究よりも進展している」(NTT)との利点がある。さらに、従来方式ではメモリ機能を使うため、通信速度が低下するが、(物質量子メモリを使わず光デバイスだけで構成する)全光量子中継であれば、光デバイスの動作速度と同程度の量子通信速度を実現できるなどの利点もある。
NTTでは「今回の全光量子中継は、従来の通信分野において通信の低消費電力化と通信速度の高速化に動機づけられ、光デバイスのみに基づく全光ネットワークの実現を目指す光通信デバイス研究に、『量子インターネット』という質的に新しい光通信ネットワークの究極的な将来像を付与するもの。現状として、全光量子中継は理論の枠組みの中で産声を上げたにすぎない。しかしながら今回の発見は、線形光学素子、単一光子源、光子検出器、アクティブフィードフォワード技術に関する光デバイス研究のなお一層の進展によって、やがて全光量子中継の実現につながり、最終的には量子インターネットの実現につながっていくという、長い道のりかもしれないが、魅力的で夢のある展開を予感させてくれる」とする。
また、NTTは「従来方式とは異なり、全光量子中継は(全光)量子コンピュータに比べ、格段に容易な技術であることが理論的に保障されている。これは、全光量子中継に基づく長距離量子通信が量子コンピュータよりも早期に実現することを意味しているだけなく、全光量子中継に必要となる光デバイスの発展の先に全光量子コンピュータが存在することを意味する。したがって、全光量子中継は量子コンピュータへの確実なマイルストーンでもある」としている。
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