後編では、「部分痩せ」について、かなり突っ込んだ検証をしてみたいと思います。そもそも、体のある特定の部位だけ、『脂肪の増加方向と減少方向に異なる加速度が生じる』ことがあり得るのでしょうか。今回はこれについて、数字を回しまくってみました。
「世界を『数字』で回してみよう」現在のテーマは「ダイエット」。人類の“永遠のテーマ”ともいえるダイエットを、冷静に数字で読み解きます。⇒連載バックナンバーはこちらから
―― ダメだ、このモデルでも説明できない
担当Mさんから送付されてきたメールの中の2行、
『女性は太る時には、ウエストから大きくなり、足、顔、そして最後にバストが大きくなります』
『しかし、ダイエットをすると胸から小さくなっていき、最後にウエストが細くなるのです』
を、合理的に説明する数理モデルが作れないのです。
私は、ここ2週間、ずっと、女性の胸 ―― もとい、女性の胸囲の数理モデルを考え続けています。私が、通勤途中や会社の中で、「とても声をかけられるような雰囲気ではない」という、黒いオーラを発している時は、いつでもその想いは「胸」に飛んでいたのです。
―― 脂肪が多い部位ほど、痩せていく実感が得られるのは当然だ。しかし「『痩せる』順番」の説明にはなっていない。
――『胸から小さくなっていく』という事象は、数値データから確認できない。そもそも物理的にも不合理だ。
―― そもそも「太る→痩せる」「痩せる→太る」で、異なる変化量が生じる、なんてことが、本当にあり得るのか?
この検討作業に疲れ果てた私は、嫁さんに泣きつきました。
江端:「あのさ、例の『胸から小さくなる』の件だけど……」
嫁さん:「まだ、やっているの? いい加減やめなよ……そんな疲れた顔して」
江端:「『胸から小さくなる』を、どうやって測定しているわけ?」
嫁さん:「どうやって、って、『ブラ』を着ける時だよ」
江端:「ブラって、ブラジャー? バストはメジャーで図っているんじゃないの?」
嫁さん:「そんなこと、わざわざするわけないじゃん。ダイエットを始めると、すぐに、ブラと胸の間に『スキマ』感が出てくるんだよ」*)
*)そうなんです。まさにそうなんです(担当M)
その時、私の頭の中に、天啓のごとく、ある1つの単語が炸裂しました。
―― ディメンジョン(次元)
江端:「じゃ……、じゃあさ、『ウエスト』の増減は、どうやって実感するの?」
嫁さん:「そんなの決まっているよ。『スカート』を履いた時だよ」*)
*)こちらも、まさにそうなんです!(担当M)
そうか、やっぱり、そういうことか。
データや数理モデル以前に、この問題の本質は「測定装置」の方にあったのです。
つまり、「ブラジャー」と「スカート」です。
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