後輩のレビュー前編はコチラ
後輩:「江端さんのコラムには『愛がない』。怜悧(れいり)に数式やデータを振り回して、女性の大切なものを破壊しているだけです」
江端:「何を言っているんだ。愛に満ち溢れているじゃないか。『部分痩せ』という無益な試みに終止符を打ち、『順番痩せ』という、ありもしない亡霊の存在を、見事に粉砕してみせただろう」
私が小中学生の頃の運動部の部活では、「兎(うさぎ)跳び」という鍛錬があり、「運動中の水分の摂取」が禁じられていました。いずれも、今はナンセンスな(生命の危険さえある)トレーニング理論として、完全に否定されています。
私は、『部分痩せ』『順番痩せ』も同じ類(たぐい)の考え方として、いずれ公に否定されるようになると思っています。
後輩:「では、言い換えましょう。『デリカシーがない』」
江端:「言い換えてないだろう、それ」
後輩:「江端さんは、人間の肉体を、筋肉、脂肪、その他の集合体と認識しているでしょう?」
江端:「当然だろう。それ以外に何があるのか?」
後輩:「女性にとっての『胸』というのは、分離可能な単なる『有体物』じゃないんです。『胸』は、コンセプトであり、理念であり、思想です。生き様なんですよ」
江端:「ごめん。今までも、何度も分からないことはあったけど、今回は、最初から最後まで、君が何を言っているのかサッパリ分からない」
後輩:「では、こう言いましょうか。もし江端さんの考え方や感じ方が、ある1つの数式で表現することに成功し、その数式の正当性が江端さんの行動データで裏付けらた、と仮定しましょう」
江端:「実現は難しいかもしれないが、不可能とは言い切れない……。よし。仮説として受け入れる」
後輩:「それは、江端さんと同じものが、常時、再生でき、分析でき、対応可能であるということです。」
江端:「……」
後輩:「それは、江端さんという『得体のしれない何か』が、江端さん自身の意思や思いを超えて、勝手にコンピュータなどで分析されて、安易に理解されるという日常です」
江端:「それは、……なんか、腹立つな」
後輩:「同じことです。女性にとっての『胸』は『大切なもの』なのです。数式やデータなどで、雑に取り扱われて良いものではないのです。彼女達の胸は、ベープマットやゴキブリホイホイのように、後発的に可換可能な部品ではないのです!」
少しの沈黙の後に、私は彼に尋ねました。
江端:「……あのさ、お前、もしかして、胸の大きい女の子、好きか?」
後輩:「 そーゆーことを言っているんじゃねえ!! 」
※本記事へのコメントは、江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。
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江端智一(えばた ともいち)
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
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