情報通信研究機構(NICT)は、2015年10月22〜23日に開催した「NICT オープンハウス 2015」で、「載せるだけ! 電力とデータを自由にやりとりできるシート媒体通信」の展示を行った。
情報通信研究機構(NICT)は、2015年10月22〜23日に開催した「NICT オープンハウス 2015」で、「載せるだけ! 電力とデータを自由にやりとりできるシート媒体通信」の展示を行った。無線/有線通信とは違い、通信シートのどこに端末を近接させても、端末への2次元通信と電源供給を可能にするという。展示では、同技術でミニカーや小さな電球に電源を供給するデモが行われていた。
シート媒体通信は、2.4GHz帯のマイクロ波がシートに閉じ込められている。シートは導電層、誘電層、導電層の3層構造となっており、任意の場所に通信用カプラを置くことで、電気的な接続がなくても通信信号と電力の伝送を行うことができる。
NICTのディペンダブルワイヤレス研究室の主任研究員である張兵氏によると、「通信信号と電力の伝送ができる理由は、シートからしみ出てくる“エバネセント波”と呼ぶ表面付近にしか伝搬しない電磁場を利用しているからである」と語る。エバネセント波を媒介にエネルギーが通信用カプラに伝わる仕組みとなっている。
電力伝送で使用される周波数は、2498MHz帯の無変調連続波で、帯域は10MHzと狭い。そのため、「シートからの漏えい電磁界はWi-Fiなどの他の電波への干渉がない」(張兵氏)という。子どもが使用するおもちゃの電池交換に掛かる手間や危険性を少なくできることから、おもちゃメーカーからの引き合いが多く、2〜5Wの電力供給で製品化を考えているとしている。
今後の予定としては、「ドローンの充電ポイントとして活用するために、シートから供給できる電力を増やしていく。そのためには、人体の保護や放熱をどう処理するかといった課題がある。人体の保護に関しては、人間が入らない場所に設置することができれば、それほど心配はないと考えている」(張兵氏)と語る。
また、布状のシートも現在開発されており、センサーを搭載することで脳波の計測システムにも応用していくという。現行の脳波計測システムは、チャネル数の増加に伴い、ケーブルが増加している。センサーが搭載された布状のシートによって、かぶるだけで計測と通信が行えるため、誰でも使いやすい脳波の計測システムが可能になるとしている。
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