さて、ここまでのTwinCAT3に対する私の感想をまとめてみたいと思います。
(1)TwinCAT3のインストールや構築が「楽々」とは、口が割けても言えません。大抵どこかで失敗して、再インストールすることになるので、最初から何回か失敗するつもりで取り組んだ方が、精神安定上、良いと思います。
(2)TwinCAT3のインタフェースも、そんなに分かりやすいとは思えませんでした。正直、まだ、プログラムの起動、停止のタイミングも良く分からない*)し、私の頭の中では、いまだに各モードの違いも整理できていません。
*)小幡さんコメント:「TwinCAT3 C/C++タスク(C/C++プログラム)はRUNモードに移行すると自動的に起動します。プログラムを停止させるには、PCのシャットダウンまたはCONFIGモードに移行してください」。
TwinCAT3も、やはり硬派の制御用ツールの1つで、
「貴様、制御LANを担うエンジニアの誇りがあるなら、ひたすらTwinCAT3を使い込め!」
「押忍!」
という、体育会系の空気がするのは否定できません。
(3)現時点で、TwinCAT3の入門書や日本語の助けは、絶望的に期待できません。
そもそも制御LANという世界自体がニッチな世界ですから、そこに、先人のメモを期待すること自体がムチャというものかもしれません。ここに「日本語」というフィルターが入れると、もう絶望的に情報が消えます。
現時点で、親切なマニュアルや入門書は、全世界のどこにも見つけられません。「始めてのTwinCAT3」とか「この1冊で分かるTwinCAT3」などという本は存在しませんし、今後も出版されないでしょう。
しかし、それでもTwinCAT3はすごいのです。
(4)スレーブをつなぐだけで、スレーブ情報がキレイに表示される。コンフィギュアードアドレスやら、なんやらのアドレスを気にする必要一切なし。もちろん、マスタのメモリ配置も全然考える必要なく、リアルタイムでスレーブの状態を直接見ることができる。
正規化されたセンサーデータの値が、同時に4つ、リアルタイムでドタバタ動いている画面を見て、私は感激の涙を抑えられませんでした。
(5)プログラムに、表示されているスレーブのポートをツールの上でリンクするだけで、制御プログラミングが可能 ―― これは、プログラマーにとっては一種のマジックキングダムです。
当然、マスタのどのアドレスの何ビット目とかリトルエンディアンなどという、面倒なことを考える必要一切なし、というのも本当に助かるものであることは、制御プログラムを作っている人には、容易に理解できると思います。
(6)(今回紹介しませんでしたが)、特にすごいと思ったのは、スレーブのトポロジーがGUIで表示されるところです。スレーブを取り違えることって、結構あるので、こういう機能は本当にうれしいです。
まあ、そもそもオープンソースでフリーのSOEMと比較するのは、酷というものですが、メモリの値を、「この私」が直接読み込み、ビット解析をして、プログラミングしなければならないSOEMに比べれば、TwinCAT3は、そりゃもう「夢と魔法の王国」ですよ。
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