こんにちは。江端智一です。
今回は、2016年1月にベッコフに訪問して、社長の川野俊充さんと、ソリューション・アプリケーション マネージャ 小幡正規さんにインタビューさせていただいた内容の一部(インタビューの全容は来月の最終回を予定)と絡ませながら、TwinCAT3のインストールから、制御プログラムの作り方まで、一通りご説明したいと思います。
インタビューの際に私が作成した資料は、こっち*)です。資料の文言は丁寧ですが、つまるところ「EtherCATをディスる内容」になっていることが分かると思います。
*)参考:公開用_ベッコフオートメーション株式会社殿_EtherCAT連載インタビュー(1回目)
これ、この私が、EtherCAT以外の制御LANの団体の方を訪問してかき集めたEtherCATへの悪口の集大成でもあります*)。
*)なぜ、わざわざそんなことをしたかと言うと、この連載が面白い内容になると思ったからです(私は、ちょうちん記事は書きません)。
結果として、この「ディスる」「悪口」に対して、川野さんと小幡さんは、完全に私を論破(しかも数値や実例の証拠付きで)してしまうのですが ―― それは、次回の最終回で。
江端:「SOEMもTwinCAT3もそうですが、なんで、PCをEtherCATのマスタにする、などという発想が出てきたのでしょうか? 専用機のマスタを作って売っている方が、もうかるんじゃないのですか?」
川野さん:「そうですね。加えて、ユーザーは、PCのマスタや新しいスレーブに対して、強烈な拒否反応もあります。現状と同じ構成のマスタやスレーブをASICで作り直そうとしている会社もありますし、静電容量が変わるかもしれないから、今のスレーブを触るな! 掃除もするな!(ホコリを取り除くと静電容量が変わるかもしれない)と言われたことすらあります」
江端:「ああ、その話分かります。私も、お客さんから『10Mのイーサネットのイエローケーブル』と『20年前と完全同一のコントローラーを作って持ってこい』と、言われたことあります」
川野さん:「それでですね、わが社が、TwinCAT3のようなPCのマスタ(ご主人様)を、強く押し進めている理由は2つあります。1つ目は、『ラダーによる記述の限界』です。ラダーというのは、機械屋の発想からできたものですが、最近のPLCのプログラムの複雑化で、ラダー記述では、限界が見えてきたのですよ。
2つ目は、プログラムの再利用性ですね。ラダー表記に比べれば、オブジェクト指向のプログラムの拡張性や再利用性は文句なしに優れていますし、プロファイルを使うことで、プログラムの使い回しも、簡単に可能となりますしね」
江端:「それと、制御の世界のリアルタイム性能を、簡単に実現できるくらい、PCの性能が上がってきたから……ですね?」
川野さん:「それは、もちろん大きな前提の1つです」
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