研究チームは、作製した銀配線を顕微鏡で観察し、最小線幅0.8μmの銀配線パターンが形成されていることを確認した。従来のスクリーン印刷や通常のインクジェット印刷法に比べて数十倍の精細度になるという。銀ナノインクの濃度を変更すれば、配線パターンの膜厚を30〜100nmの範囲で制御できることも確認した。
また、通常の印刷法だと「コーヒーリング効果」により塗布したインクの周縁部で厚みが増し、設計データとは配線の抵抗値が大きく異なる場合がある。スーパーナップ法を用いると、銀配線の厚みは線幅に関係なく一定となり、コーヒーリング効果の影響は確認されなかった。電子顕微鏡で塗布したインクの周縁部を観察したところ、反応性表面上では銀ナノ粒子同士の溶融により球状の形状が消失し、銀薄層を形成していることが分かった。
研究に用いた銀ナノインクには、アルキルアミンの保護層で被覆された銀ナノ粒子が、重量比40〜60%という高い濃度で含まれている。山形大学が行った研究により、この銀ナノインクを乾燥させることで、結合力の弱いアルキルアミンは徐々に脱離し、常温でも銀ナノ粒子同士の凝集と融着が進行することが解明されている。これらの特性を活用したことで、スーパーナップ法を開発することができたという。
研究チームは、新たに開発した印刷技術を用いて、可視光の回折限界に近い線幅約2μmの銀配線をプラスチック基板上に形成し、フレキシブルなタッチパネルセンサーを試作した。このタッチパネルセンサーは、高い曲げ耐性を示すとともに、ITO(酸化インジウムスズ)や銀ナノワイヤー、グラフェンなどを用いた他の透明導電膜と比べ、光透過率やシート抵抗といった特性に優れていることも確認した。
田中貴金属は、今回の技術を用いたフレキシブルなタッチパネルセンサーの製品化に取り組んでいる。2017年1月にはサンプル出荷を開始する予定である。
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