図3は影棒3のメイン基板の様子である。ボードコンピュータのインタフェースとしてLAN端子、HDMI、USBを備えている。またWi-Fi通信機能(図面左下の金属シールド部。内部は台湾Realtek Semiconductorのチップ)も搭載している。
メインプロセッサはAmlogicの「S802-B」だ。採用されているのは若干仕様の古い32ビットチップである。
Amlogicは既に次の世代のチップを続々とリリースしていて、「S905」「T866」「S805」などが市場に出回っている。最新のハイエンドチップはS905で、CPUはARMの64ビット「Cortex-A53」のクアッドコア、GPUはARMの「Mali-450」のペンタコア(5コア)で、4K/60fps(フレーム/秒)の動画に対応し、28nmプロセスで製造されている。
S905は影棒3と同様のTV BOXコンピュータに採用される。中国では数多くのTV BOXに採用されており、現在、テカナリエでチップを開封調査中である。
通常、プロセッサは新製品化を行う上で(もしくはある程度の時間が経過したので新バージョンを出す場合)、CPU/GPU性能をアップグレードする。しかしAmlogicのチップは、一部はアップグレードされているが、仕様としてはむしろデグレードされている。
具体的には、こうだ。
S802-B=CPU:Cortex-A9 クアッドコア/GPU:Mali-450 MP8(8コア)
↓
S805=CPU:Cortex-A5 クアッドコア/GPU:Mali-450 MP2(2コア)
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S905=CPU:Cortex-A53 クアッドコア/GPU:Mali-450 MP5(5コア)
CPUはクアッドコアなので、若干の差こそあれど大きな性能差はない(Cortex-A53はOSの64ビット化での対応)。しかしGPUについては、同じバージョンのARM Mali-450を使いながらもMPコアの数を減少させている。S802では8コアだったが、最新のS905では5コアに減っているのだ。
実際のユースケースなどを見て、MPコア数を減少させたのかもしれない。Amlogicのチップのコア数が減っている理由は定かではないが、一般的にいえば、チップが新しくなって仕様がデグレードされるケースはほとんど見かけない。なお、同じプロセス世代の28nmを用いるS802-BとS905は異なる工場の28nmを使っている。この辺りについては、S905チップ開封後に本シリーズの中で違いを明確にしていきたい。
新製品で機能を落とし、平然と別の工場に移っていくような臨機応変さは、中国系チップメーカーの特徴の一つとして捉えておく必要がある。これは実際には驚異的なことなのである。
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