取材では、マクニカのイノベーション推進統括部のMpression推進部で部長を務める米内慶太氏にも話を聞くことができた。Mpressionは同社のオリジナル技術ブランドであり、マクニカグループ各社が開発したソフトウェア、プラットフォーム、評価ボードなどを結集した総合的な技術ソリューションを指す。
そのコンセプトは、顧客のイノベーション・課題解決を加速すること。米内氏は、「ここでいう課題解決は、単なる技術サポートや評価ボードの提供にはとどまらない。今までの技術商社は、当社も含めて半導体デバイスを売るという“モノ”にフォーカスしてきた。しかし、これから、課題を解決する“コト”にシフトしなければならない」と語る。そこで、同社はMpressionの定義を広げてきたという。
メイカーズ向けにプロトタイピングキットを提供する「Mpression for MAKERS」では、2016年2月からVIAOと協業してハードウェア量産化支援を開始するなど、サービスの拡張を行っている。また、マクニカ・ネットワークが提供するサイバーセキュリティにおける取り組みの強化も行ってきた。IoTも、Mpressionで注力する分野の1つとする。
「IoTは各社が取り組みを始めているが、言葉自体が大きく拡散している。顧客もIoTを導入しなければならない意識はあるが、迷いながら進めているため、“どうしていいか分からない”ケースが多い。IoTの答えは1つではないと思っている。Mpressionでは、当社のソリューションを用いることで、IoTの実現可能性を提示するPoC(Proof of Concept:概念実証)打ち出すことで、顧客の選択肢を広げていく。自動車でいう“ショーモデル”であり、“IoTでは○○ができる”といった概念の部分である」(米内氏)
マクニカは、IoTを全面導入する前に、課題解決にそれが適合しているか事前検証を行うフェーズ(PoP:Proof of Practice)も必要と考えた。全工場にIoTシステムを導入するとなると、多くの時間と投資が掛かってしまうため、PoCだけでは顧客の課題解決ができないと判断したためだ。今回発表したキットも、以前からPoCとして概念を打ち出してはいたが、実際にキットを購入し、メッシュネットワーク構築の事前検証ができるPoPの1つとして新たに展開した。マクニカは今後も、PoCとPoP双方に向けた製品を拡充することで、顧客の課題を解決するための選択肢を広げていく。
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