2015年、半導体業界再編の主役を演じた1社であるNXP Semiconductorsが、2016年には“買収される側”に……。
2016年10月27日(米国時間)、Qualcomm(クアルコム)がNXPを買収すると発表した。その買収額は2016年2月に完了したAvagoによるBroadcom買収額370億米ドルを100億米ドル上回る約470億米ドル。日本円にしてほぼ5兆円となる半導体史上最高額での買収となった。買収完了時期は、2017年末。
NXPは2015年12月にFreescaleを買収し、車載向け半導体で世界シェア首位に躍り出るなど、売り上げ規模約1兆円に達する。その巨大な半導体メーカーを、スマートフォン向けモデム/プロセッサ最大手で売上高2.5兆円を上回るQualcommが飲み込むことになった。買収が完了すると、Qualcommの売り上げ規模は、3.5兆円となり、Intel、Samsung Electronicsに次ぐ世界第3位の半導体メーカーとなる。
巨大半導体メーカー同士の経営統合となるが、取り扱う製品で重複はほとんどなく、補完関係にある買収事案といえる。さまざまな機器で無線通信機能の取り込みが進む中、Qualcommの無線通信デバイスと、NXPのマイコンや各種ペリフェラルICを融合させ、自動車やIoTといった成長市場で、一層のシェア向上を狙うことになる。
その規模の大きさから、買収の影響が及ぶ範囲も広くなる見通しで、Qualcommの競合であるBroadcomやMediaTek、NXPの競合であるSTMicroelectronics、ルネサスなどがどういった対Qualcomm戦略をとるのかも注目される。
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Lattice Semiconductor(ラティス セミコンダクター)が投資ファンドに買収されることで合意したと2016年11月に発表した。
Latticeは、FPGAベンダーの1社であり、昨今は回路規模は小さいながら、小型、低消費電力、低価格といった独自の特長を打ち出し、スマートフォンなどのモバイル機器向けなどで活路を見いだし、2015年にはインタフェース用ICなどを得意にするSilicon Imageを買収するなどしていた。
ただ、Latticeを巡っては、身売りのウワサが業界でささやかれていた。
今回、買収されることで合意した投資ファンドのCanyon Bridge Capital Partnersは、米国に拠点を置くものの、中国政府と関係を持つファンドとされる。そのため、米政府当局が売却を認めない可能性が指摘され、買収が成立するかどうかは、かなり不透明だ。過去、同様のケースとして、中国半導体メーカーTsinghua Unigroupの関連会社であるUnisplendor(紫光集団)が、Western Digitalの株式を一部取得すると発表したが、米当局が調査に乗り出したために、破談となっている。
仮に、今回の買収が成立すると、Microsemi(マイクロセミ)に買収されたActel(アクテル)、Intelに買収されたAltera(アルテラ)に続く、FPGAベンダーの売却劇となる。
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Siemens(シーメンス)が、半導体設計用EDAツール大手のMentor Graphics(メンター・グラフィックス)を約45億米ドルで買収すると2016年11月に発表した。
Mentorはこれまで“物言う株主(アクティビスト投資家)”のElliott Managementから株主価値を高めるよう求められていた。Mentorは2016会計年度の上半期(7月31日を末日とする)で1000万米ドルの損失を計上している。2015年の同時期は2100万米ドルの利益を出していた。
SiemensはMentor買収の狙いについて、「機械設計、熱設計、電子設計および組み込みソフトウェア設計ツールを1つの統合プラットフォームとして提供できる、独自の“デジタル・インダストリアル・プレイヤー”の地位を目指す」と強調している。要はSiemensは、航空機から鉄道、自動車、ウェアラブル機器まで設計できるような完全なツールを提供したいとの思惑があるようだ。
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