TDKは2016年12月21日、センサーを手掛ける米InvenSenseを買収すると発表した。買収額は約13億米ドル(約1570億円)。
InvenSenseは、慣性センサー、加速度センサー、ジャイロセンサーなど各種センサーを主力にするファブレスメーカーで、近年、スマートフォンやゲーム機向けで急速にシェアを伸ばしていた企業だ。2016年3月期の売上高は4億1800万米ドルである。
一方のTDKは、この1年間で、Micronas Semiconductor、Tronics Microsystemsに続く3件目のセンサー企業買収であり、センサー事業への注力ぶりがうかがえる。
TDK社長の石黒成直氏は、InvenSense買収の目的として「1つは、非光学式センサーの製品ポートフォリオを拡充すること。2つ目は、InvenSenseが強みを持つ慣性センサー技術を獲得することで、センサーフュージョンなど、顧客のニーズによりマッチした製品を提供すること。3つ目は、TDKの販路や、Qualcommと設立した合弁会社であるRF360 Holdings Singaporeを活用することで、InvenSenseの製品を、ICTや自動車、産業機器の各市場に向けて拡大していくことである」の3つを挙げている。
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このように、2016年も半導体業界全体で合意、発表に至った買収劇の買収総額1000億米ドルを超えた。2015年に続き2年連続だ。2017年も総額1000億米ドルの買収劇が繰り広げられるかどうかは、全く予想がつかない。
2016年は、Qualcommによる470億米ドルでのNXP買収合意があり、業界全体での買収総額を底上げした。2017年もこうした超巨大買収劇が起こらないとは限らないが、可能性としては、そう高くないように思われる。
2016年以上に2017年再編が進みそうな領域としては、アナログ半導体が挙げられる。ADIのLinear買収を振り返った際にも紹介したが、ロジックやメモリといった領域に比べ、多くのメーカーが乱立している状況が続いている。そうした中で、ADIのLinear買収、ON SemiconductorのFairchild買収など、にわかにM&Aの動きが活発化している。「まだまだアナログ半導体メーカーの再編は始まったばかり、これからが本番」と指摘するアナログ半導体メーカー関係者は多い。驚くような大手アナログ半導体メーカー間のM&Aが起こっても、不思議ではないだろう。
また、2016年もあったが、買収/合併後の統合作業において、シナジーや将来性が見込みにくい事業を売却するケースは少なくなく、2015〜2016年と多くの買収/合併が繰り広げられたため、2017年はより活発に事業の売買が行われそうだ。
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