Fab 42は、オバマ前大統領がかつて、「米国の製造業の未来を示す象徴だ」と賞賛したほど大規模な工場である。しかし、Intelは2014年1月に、稼働を延期すると発表した。Brookwood氏によると、Intelは当時、その理由について、「市場の需要を十分に得られなかったためだ」としている。
Fab 42はもともと、14nmプロセスでの製造を予定していた。Lineback氏は、「Intelは当時、『Tick-Tock(チックタック)戦略』に基づき、プロセッサ技術開発のロードマップを掲げ、プロセス世代開発を2年間のサイクルで維持し、ムーアの法則を積極的に継続していくとしていたが、これがやがて困難になることを予測できなかった」と指摘する。
また同氏は、「Intelは当時、スマートフォン向けアプリケーションプロセッサ分野での成功を目指していたが、ARMアーキテクチャを外すことができず、実現には至らなかった。さらに、PC市場が低迷し始めたのと同時期に、14nmプロセスが歩留まりの問題で不安定になり始めてしまった」と述べる。
Brookwood氏は、「Intelは、サーバ市場において好調を維持しているが、サーバはそれほど多くのシリコンチップを必要としない」と述べている。
Intelの広報担当者は、「どのような製品に、新工場を必要とする需要があるとみているのか」という質問に対し、「今後3〜4年の間に、低消費電力化を実現する、あらゆる種類の次世代コンピューティングデバイス向けの需要が増大するとみている」と答えている。
しかしBrookwood氏は、「GartnerやIDCなどの米国の市場調査会社が以前から、PC市場が下落傾向にあると報じていることから、IntelがFab 42に新たに投資を行うのは、新工場としてEUV装置を設置するためだと確信している。Intelはまず、EUVスキャナーを1台または2台導入して、Fab 42の大規模なクリーンルームの一角に設置し、試運転を開始するのではないか」と述べる。
Intelは2017年後半に、14nmプロセスから10nmプロセスへの移行を予定している。Brookwood氏は、「2020年までには、EUVスキャナーで予定通りの水準のスループットを実現できるだろう」と述べている。
Intelのプレスリリースによれば、Krzanich氏は、Intelの社員たちに向けた電子メールの中で、以下のように述べている。
「Fab 42で適用予定の7nmプロセス技術は、ムーアの法則の未来像を示す、世界最先端の半導体プロセス技術となる。7nmプロセスチップは、最先端のコンピュータやデータセンター、センサーなど、さまざまなハイテクデバイスに搭載され、人工知能(AI)や次世代自動車、輸送サービス、医学研究、医療などの飛躍的な発展を実現するだろう。これらの分野は、コンピュータの優れた演算能力や、高速ネットワークへのアクセス、大容量のデータストレージ、超小型チップなど、最先端のムーアの法則によってもたらされるさまざまなメリットに大きく依存している。
Intelは今後3〜4年の間に、70億米ドルの投資予算を段階的に使っていくとしている。その中の一部が、設備関連に投資される予定だ。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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