チップセットという製品の作り方がある。スマートフォンや各種ガジェットを作るためには、プロセッサ、電源IC、インタフェース、通信チップ、メモリなどを組み合わせる。それを1社でセット化できているメーカーもある。スマートフォンではQualcommや台湾MediaTek、中国HiSilicon、韓国Samsung Electronicsらだ。これらのメーカーがチップセットを販売し、多くのスマートフォンメーカーを生み出してきた。
メモリチップまでセット化できるという点で、Samsungのチップセットが最も効率が良い可能性が高い。SamsungはWi-Fiなどの通信を手掛けるスウェーデンのNanoradioを2012年に買収していて、いずれWi-Fiチップなども自前で開発する可能性が高いと思われる。
表1は、2017年8月における最新スマートフォン5機種に搭載されている最上位機種のチップセットについてまとめたものである。5機種とは、Samsungの「Galaxy S8」、中国Xiaomiの「Xiaomi Mi6」、中国UMIの「UMi Z」、中国Huaweiの「P10 Plus」、Appleの「iPhone 7」である。Apple以外は、チップセットによってスマートフォンの主要機能の大半を実現している。QualcommとMediaTekはメモリ以外のほぼ全てをセット化しているが、HiSiliconやSamsungは、Wi-Fi/Bluetooth/GNSS(GPSなど)チップは別メーカー(Broadcom、一部はCypress Semiconductor)となっている。
図3に戻ろう。1社でチップセットを形成できる力のあるメーカーは上記のようにスマートフォンで支配的構造を作ることができた。しかしカメラ(アクションカメラ、ドライブレコーダー、全天球カメラ、一般的なデジカメ)ではチップセットはほぼ用いられていない。
しかしAllwinner+X-Powersはほとんどの製品にその組み合わせのまま使われている。これもチップセットの1つの姿だろう。そして今、「中国プロセッサ+中国電源IC」という新たな“黄金の組み合わせ”が多くの製品に使われ始めている。
この新たな組み合わせのチップセットが、ゲーム機や全天球カメラ、シングルボードコンピュータ、IoT(モノのインターネット)のエッジデバイスに無数に使われている現実があるのだ。
NVIDIAやIntelのようなコンピューティングメーカーも同様に電源ICでは黄金の組み合わせを持っている。例えばNVIDIAは、電源ICに常時、米Texas Instruments(TI)あるいは米Maxim Integratedのチップを組み合わせている。メーカーを組み合わせたチップセットでも十分なセット機能を果たし、電力効率を最大化できている。
では日本はどうだろうか……と見てみると、1社でチップセットを形成できているメーカーもなければ、メーカー間をまたぐ“黄金の組み合わせ”というチップセットも存在していないのが実情だ。
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