USB Type-CがサポートするUSB 3.1のようにデータレートが高いと、伝送経路における信号損失が大きくなってしまう。そのため、リドライバなどの信号調整回路が必要になる。Tyler氏は、信号損失にまつわる興味深いエピソードを紹介した。あるスマートフォンメーカーが、USB Type-C(USB 3.1 Gen1をサポート)を採用した際、USB Type-CコントローラーICを、筐体の下部にあるポートから遠い、筐体上部に組み込んだ。ところが、端末をテストしたところ、信号品質などがUSB 3.1 Gen1の仕様を満たせないことに気付いた。USB Type-Cコントローラーとポート間の距離が長過ぎたことが理由だった。これを解決するには、高価な高品質ケーブルを追加する方法があるが、これだとスマートフォン1台当たり6米ドルの追加コストが発生してしまう。このスマートフォンメーカーは、ON Semiconductorのリドライバを統合することで、高価なケーブルを使う対処法を避けることができ、追加コストも6米ドルではなく、75米セントで済んだという。
ON Semiconductorは、USB Type-Cコントローラーやマイコン、パワー変換回路などを1チップ化した、パワーバンクなど向けのSoC(System on Chip)も既に提供している。Tyler氏は、「(USB Type-Cは新しい規格であるため)まずは、USB Type-C向けのICや電子部品は使いやすい、ということが最も重要だ。ただ、現在のところUSB Type-C市場は変化が速く、要件もアプリケーションによって異なる。そのため、今は数多くのUSB Type-C向け製品をそろえているが、もう少し市場が落ち着けば、SoCのように、ある程度の回路ブロックをまとめた製品も増えると考えている」と語った。
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