オランダのDSMは、車載用電子部品の小型高密度実装を可能とする次世代PPA(ポリフタルアミド)樹脂材料「ForTii Ace JTX8」を発売する。
オランダのDSMは2017年11月9日、車載用電子部品の小型高密度実装を可能とする次世代PPA(ポリフタルアミド)樹脂材料「ForTii Ace JTX8」を発売すると発表した。新製品は、リフローはんだ付けが可能な表面実装型コネクターなどの用途に適している。
ForTii Aceシリーズは、PA(ポリアミド)4TをベースとするPPA樹脂材料である。機械的特性や耐熱性、耐薬品性に優れている。しかも、ガラス転移温度(Tg)は160℃と高く、従来のPAやPPAでは実現できなかったという。このため、車載用など利用環境が高温下でも物性を維持することが可能である。同シリーズの第1弾として2017年8月には、エンジンルーム内の金属部品を代替できる「ForTii Ace MX」を発売している。
ForTii Ace JTX8は、ForTii Aceシリーズの第二弾となる。ForTii Ace MXの特性を維持しつつ、コネクターなど車載用電子部品に求められる特性を実現するための性能を追加した。例えば、耐熱性や剛性、靭性、絶縁性、耐トラッキング性、荷重たわみ温度などに関し、極めて高い水準を確保しているという。
さらに、耐プリスター(膨れ)性は最高レベルの「JEDEC MSL 1」に対応している。このため、ForTii Ace JTX8を用いた電子部品は、リフローはんだ付けを行ってもプリスターの発生を抑えることができるという。この他、射出成形が可能で、吸水性が低く寸法安定性も高いため量産性に優れている、といった特長がある。
これらの特長を生かし、車載電子システム向けコネクター用途などに、新製品を提案していく。今後はEV(電気自動車)など電動化が急速に進む中で、表面実装型コネクターを用いることで、部品搭載密度をこれまでの2倍かそれ以上にすることができるという。
DSMの経営会議ボードメンバーを務めるDimitri de Vreeze氏によれば、同社は持続可能性への貢献を事業戦略の柱の1つに掲げている。製品ポートフォリオも持続可能性を重視しており、技術革新によりその構成比率を高めている。特に「持続的発展のためのキーワードは自動車産業で、3〜5年後には大きな変革期を迎えることになろう」との見方を示した。世界中の自動車のうち、87%に同社の材料が何らかの形で用いられているという。
また、ディーエスエムジャパンエンジニアリングプラスチックの営業マーケティング本部エレクトロニクス・一般産業用途の統括部長を務める姜信良氏は、日本におけるカーエレクトロニクスに向けた事業戦略として、「日本市場におけるスペックイン活動の推進」「自動車とエレクトロニクスチームの連携や融合によるトータルソリューションの提供」などを行っていく方針を示した。日本の自動車メーカーなどとの協業により、日本発の製品開発も視野に入れている。
さらに、自動車の電動化や自動運転への移行、それに伴う車載エレクトロニクス技術の進化などにも触れた。こうした進化を支える電子部品にはさらなる小型化、軽量化、高度化、高耐圧化が要求される。これらの製品開発を可能にするのが、最新の車載エレクトロニクス技術に対応する新材料「ForTii Ace JTX8」だという。
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