企業は高い特許料を払って何らかの対価を得ようとするが、Qualcommは限界まで特許使用料を引き上げてきた。同社はどこかの時点で、あるいは今すぐにでも自社のIPビジネスモデルを再考すべきだと思うが、実際にそうするかどうかは疑わしい。
筆者の直感では、QualcommのチェアマンであるPaul Jacobs氏は、(QualcommとBroadcom合併後の)新生Broadcomの取締役会で13番目の席を得られるとしても、自身の父親(Irwin M. Jacobs氏)が設立し前チェアマンを務めたQualcommを手放すことはないだろう。むしろHock Tan氏を引き下がらせるはずだ。
筆者には、Qualcomm本社にある、あの名高い“Patent Wall(特許の壁)”を陰で支えるビジネスモデルを、Jacobs氏が変えるとは到底思えない。
以上のことから、Qualcommの運命を決めるのは株主ではないかと筆者は考えている。より具体的には、Blackrock、Vanguard、Fidelityのような大手機関投資家の代理投票をつかさどる数十人のエグゼクティブのことだ。専門家らに聞いたところによると、それらのエグゼクティブは社内の株式アナリストから情報を得ているが、最終的な判断は自ら下すのだという。
筆者はQualcommの主要な機関投資家10社に連絡を取ったが、どこも取材には応じてくれなかった。そのことから、2018年3月6日ごろに役員候補への代理投票が発表されるまで、この問題の解決は持ち越されると見込んでいる。
一方、アナリストらは、QualcommによるNXP Semiconductors(以下、NXP)の買収によって状況が混乱する可能性があると考えている。QualcommがNXPの買収額を引き上げる可能性がある一方、近いうちに中国政府が買収を承認するともいわれており、Broadcomにとって安心できない状況が続いている。
Hock Tan氏は、主要製品については、しっかりと覇権を握ることを望む一方で、利益の少ない事業は売却する方針だという。そしてTan氏の目には、NXPは価値のあるものとして映っていないようだとアナリストらは述べている。
半導体業界で繰り広げられている買収劇では、今後もさまざまな展開が待ち受けていると考えられる。そのどれもがよい動きとは、筆者には到底思えない。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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