一方で、ミリ波については、有利な立場にいるメーカーはないのではないだろうか。
なぜならミリ波では、現在2G/3G/4G RF向けに使われている、複雑なSiP(System-in-Package)ベースのフロントエンドモジュールが、実質的に使えなくなる可能性があるからだ。Troadec氏は、「ミリ波のRFFEでは、最先端CMOSおよびSOI(Silicon on Insulator)技術をベースとしたパワーアンプや、LNA(ローノイズアンプ)、フィルター、スイッチ、受動部品など、あらゆる種類の回路ブロックを開発することが可能だ」と述べる。
Troadec氏は、「SiPからSoC(System on Chip)への移行が進めば、最先端のCMOS設計や製造メーカー各社にとっては、新たな道が開かれることになる。Samsung ElectronicsやHuawei、MediaTek、Qualcomm、Intelなど、携帯電話機アーキテクチャのエコシステムにおける既存のプレイヤー企業は、RF市場への移行に意欲を見せている」と述べている。
また同氏は、「現在、Qualcommが5G向けミリ波の分野で勢いを増している一方で、Broadcomはサブ6GHz帯に注力している。このため、もし両社の合併がトランプ大統領によって阻止されていなかったら、非常に強力な独占状態が生み出されていただろう。Intelはこれを懸念して、自らも買収に名乗りを上げようとしていたのではないだろうか」と述べる。
もちろんこのような独占状態が、RF市場だけにとどまることはないだろう。合併後のBroadcom/Qualcommは、Broadcomの無線からQualcommのアプリケーションプロセッサやモデム、トランシーバーに至るまで、あらゆる分野を支配下に置くことになるはずだ。
米国の市場調査会社であるABI Researchで主席研究官を務めるStuart Carlaw氏は、EE Timesの取材に応じ、「合併後のBroadcom/Qualcomm陣営は、Wi-Fi市場全体で59%のシェアを、Bluetooth市場では46%、位置情報チップ市場では67%、セルラー市場では41%、それぞれ獲得するとみられる」と述べる。
これはつまり、政治的な理由として中国を取り上げていながら、誰もが、Broadcom/Qualcommによる市場の独占を最も懸念していたということに他ならない。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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