こうした状況の中、AT&Tや他の通信事業者は、3GPPで最重要課題となっている「LTEと5Gで、周波数帯を動的に共有する」技術に対する準備を進めている。Wolter氏は、「需要に応じて、LTEのサービスを停止せずに、最初の5Gユーザーにサービスを提供する方法を想定している。これによって、容易に移行を進めることができる」と述べている。
AT&Tなどの通信事業者は、標準規格と規制が整理されるのを待ってから、新しい周波数帯のライセンスを取得するべきか、古い周波数帯の再割り当てを受けるべきかを判断する方針のようだ。Wolter氏のグループは、これらの決定が下されるまで、サブ6GHz帯のテストベッドの設置を待つという。
他の5Gの用途についても、準備が進められている。AT&Tの競合であるVerizonは、2018年中に5Gを使用した固定無線インターネットアクセスを提供する計画を発表した。米国のケーブルテレビ大手Comcastなども、同様の計画を進めているという。AT&Tは、3都市で固定無線サービスのパイロット運用を実施しているが、商用サービスの開始時期については明らかにしていない。
Wolter氏は、「Verizonは2018年に、先行規格に対応した機器で固定無線サービスを提供するとしている。当社は、先行規格に対応した機器でパイロット運用を実施するが、サービスの展開は標準規格に対応した機器で実施することを決定した」と述べている。
AT&Tはこれとは別に、Release 16の策定作業をサポートしている。Release 16は、基地局に光ファイバーを導入することが難しいエリアにおいて、バックホールとして5Gを使用するための規格である。Wolter氏は、「当社は、できるだけ早い5Gの実装に向けて、ベンダーと協力してきた。ただし、AT&Tのネットワークがどれくらい広く利用されるかはまだ分からない」と述べている。
Wolter氏は、「通信事業者は、5Gによって新しい市場が開拓されることを大いに期待している。それには標準規格の策定と実装に関する課題の解決が必要で、現在、実現に向けて全力で取り組んでいる」と語った。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.