Qualcommは2018年5月、データセンター向けのArmベースSoC(System on Chip)「Centriq」の開発部門を秘かに閉鎖した。これは、2016年10月に発表したNXP Semiconductors(以下、NXP)との合併による、10億米ドル規模のコスト削減の一環として計画されていたことだった。
Qualcommは2018年5月、データセンター向けのArmベースSoC(System on Chip)「Centriq」の開発部門を秘かに閉鎖した。これは、2016年10月に発表したNXP Semiconductors(以下、NXP)との合併による、10億米ドル規模のコスト削減の一環として計画されていたことだった。なお、NXPとの合併は、まだ完了していない。
コスト削減の取り組みは、QualcommがBroadcomからの敵対的買収提案を回避した数週間後に開始された。Qualcommは、Broadcomによる敵対的買収の阻止に向けて、10億米ドルのコスト削減による収益改善を約束していた。驚いたことに、Qualcommの経営陣は、Irwin Jacobs氏の息子であり、同社のチェアマンで元CEO(最高経営責任者)のPaul Jacobs氏の解任も決議した。
Irwin Jacobs氏は、2018年5月23〜24日にベルギーで開催された「imec Technology Forum」で特別功労賞を受賞したが、一連の出来事を考えれば、このインタビューで同氏が愚痴をこぼしたとしてもおかしくはなかった。だが、同氏はQualcommでの職を辞した後も、それまでと同様に前向きで活気に満ちあふれている。
同氏は筆者に対し、「身を引いて、残った人たちに経営を委ねることも必要だ」と語った。とはえ、物申したいことがないわけではないはずだ。
同氏は、「Centriq事業が中止されたことは非常に残念だ。他社が同事業を引き継いでくれることを願っている。PaulやSanjay Jha氏(Qualcommの元バイスプレジデントで、2018年3月にGLOBALFOUNDRIESのCEOを解任された)など、現在はQualcommを去った人たちがこの取り組みに賛同してくれるかもしれない」と語った。同氏は、Centriq事業の存続に向けてこうした人たちに協力を呼び掛けているという。
その一方で、「PaulはQualcommの非公開化を検討している。同社の規模を考えると、これは非常に困難な取り組みだが、彼は実現を目指している」(Irwin Jacobs氏)という。
似たような事例として、Dellの創設者でCEOのMichael Dell氏は、同社が支援を模索する中、企業買収ファンドとともに2013年に同社を買収している。だが、Irwin Jacobs氏は、Dellのこの買収事案については特に見解を示さなかった。同氏は、「私は、“常に新しいアイデアや製品を作り、利益を得ることができる立場にあれ”とアドバイスしている」と語った。
皮肉なことに、Qualcommが投資家を安心させるために10億米ドルのコスト削減を実施した直後に、NXPの合併提案は見通しが明るくなった。関係筋によると、「米連邦取引委員会(FTC)は中国の大手通信機器メーカーZTEへの部品提供を禁止する措置を取っていたが、トランプ米大統領が、この措置の緩和を提示したことを受け、中国がQualcommとNXPの合併を承認する動きが見られる」という。
ただし、Irwin Jacobs氏は、「どのような展開になるかはまだ予測できない」としている。同氏は、1990年代に起こったQualcommのCDMA技術のライセンスをめぐる、中国との10年近くに及ぶ争いに触れ、「現時点ではNXPとの取引に追い風が吹いているが、明日には状況が一変する可能性もある」と語った。
同氏は、両社の合併によって自身が創設した会社の体制が変わることについては、懸念を示さなかった。「今回は非常に規模の大きい買収なので、その分、両社の統合には手がかかるだろう。だが実行はできるはずだ」(Irwin Jacobs氏)
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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